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遺伝的性質を示すカルバペネム耐性下痢原生大腸菌を同定、アフリカ初-東京医歯大ほか

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2021年05月10日 AM11:30

CREは人類の脅威として強く警戒視されているが、実態は十分に把握されていなかった

東京医科歯科大学は5月7日、ガーナ大学野口記念医学研究所との共同研究で、世界的流行リスクがある大腸菌の系統に属し、アフリカで初となる遺伝的性質を示すOXA-181型カルバペネム分解酵素産生下痢原生大腸菌を同定したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科分子病原体検査学分野の齋藤良一教授とウイルス制御学分野のPrah Isaac大学院生、山岡昇司教授らの研究グループと、ガーナ大学野口記念医学研究所との共同研究グループによるもの。研究成果は、「Emerging Microbes & Infections」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

1980年代以降、医療機関内で抗菌薬に耐性を獲得した薬剤耐性菌が増加し、近年は動物や環境にも拡散していることが明らかとなっている。そのため、2015年にWHOが採択した薬剤耐性対策の国際行動計画に基づき、世界各国でヒト・動物・環境において薬剤耐性菌の発生と拡大を防ぐ対策が講じられている。

一方、東京医科歯科大学の国際感染症研究拠点が設置されているガーナ共和国でも、2017年から自国の行動計画に基づいて、薬剤耐性菌の動向調査や監視、抗菌薬適正使用の推進等が行われているが、薬剤耐性菌の動向は十分に解析が進んでいなかった。中でも、カルバペネム系抗菌薬に耐性を獲得したカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)は、人類の脅威として国際的に強く警戒視され、ガーナ共和国を含めアフリカでの動向は世界的なCREの拡散状況を知る上で必要不可欠な情報であると考えられてきた。

同定された2株が持つプラスミドは、ヨーロッパ諸国などで見つかったプラスミドと極めて近い構造を持つことが判明

ガーナ共和国では、抗菌薬適正使用の意識が高まっていたが、不適切な使用もあるため、薬剤耐性菌が生じやすい環境が存在していた。研究グループはまず、小児の下痢症を示す外来患者より分離した大腸菌62株を用いて、カルバペネム系抗菌薬を含む多種類の抗菌薬感受性を調査した。その結果、途上国で分離されることが多い腸管毒を産生する下痢原生大腸菌(1EC187株)と非下痢原生大腸菌(1EC213株)の2株がカルバペネム系抗菌薬の感受性低下を示し、それらはカルバペネム系抗菌薬分解酵素(カルバペネマーゼ、以下CP)によって起こることが判明した。次いで、接合試験により、CPをコードする遺伝子は他の細菌細胞に水平伝播可能な伝達性プラスミド上に存在することが確認された。

さらに、上記2株の遺伝的特徴を探る目的で、複数の次世代シーケンサーで完全ゲノム配列を決定し、薬剤耐性因子を解析したところ、CPをコードする遺伝子はOXA-181遺伝子 blaOXA-181と同定され、同時にキノロン系やアミノグリコシド系抗菌薬などに対する耐性因子を染色体やプラスミド上に保有していることも確認された。また、今回決定した完全ゲノム配列を公共データベースにあるCREの配列データとともに系統解析したところ、1EC187株は世界的流行が危惧される遺伝子型ST410に属し、blaOXA-181など多くのCP産生株が位置する分岐群(B4/H24RxC群)と類似した遺伝的性質を示すことが判明した。

続いて、blaOXA-181を搭載したプラスミドに着目し、その発生・進化を探る目的で構造を解析したところ、2株が持つプラスミドは、IncX3型(1EC187株、pEC187_2-OXA-181プラスミド)およびIncFII型(1EC213株、pEC213_1-OXA-181プラスミド)に属し、特にpEC187_2-OXA-181プラスミドは、スイスなどのヨーロッパ諸国などで見つかったプラスミドと極めて近い構造を持つことがわかった。加えて、blaOXA-181の周辺構造を詳細に解析したところ、キノロン耐性遺伝子qnrとともにIS26複合トランスポゾン内に位置することが明らかとなった。

ガーナ共和国でもCREが拡散している可能性

研究グループは、これまでにST410系統に属するCP非産生大腸菌をガーナ共和国で多数分離しているため(未発表)、それらの結果もふまえると、1EC187株はガーナ共和国に存在した下痢原生大腸菌が、blaOXA-181を含むIncX3型プラスミドを外部から獲得した株である可能性があると推察した。また、blaOXA-181を含むIncX3型プラスミドはヨーロッパ諸国などの環境由来株で確認されているため、ガーナ共和国の環境中でもCREが拡散している可能性が示唆されたとしている。

途上国におけるCREや薬剤耐性菌の発生・拡散抑止等に関わる感染対策への貢献に期待

今回の研究成果により、今後も世界的な拡大が予想されるCREについて、ガーナ共和国の医療機関における実態の一端が明らかになった。これらの成果は、未だ乏しいアフリカのCREデータの集積に貢献し、世界的なCREの時空間的広がりを解明するための基盤情報になると考えられる。さらに、世界的流行株になり得るCREクローンの発生を未然に防ぐリスク評価に応用できる可能性を秘めている。

現在、研究グループは、生活排水などに暴露される環境がCREのリザーバーであることを想定し、環境におけるCREの動向調査も進めている。また今後、家畜などの動物でもCREの動向調査を開始する予定で、「これらワンヘルス・アプローチの視点から実施するCREのモニタリングは、途上国におけるCREや他の国際的脅威となる薬剤耐性菌の発生・拡散抑止等に関わる感染対策や公衆衛生対策を講じる際に有益な情報になることが期待される」と、述べている。

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