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自閉スペクトラム症児は、音に対する脳の反応が早く起こると判明-金沢大ほか

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2021年04月14日 AM11:30

自閉スペクトラム症児の、音によって引き起こされる脳の反応の特徴や言語能力との関連は?

金沢大学は4月9日、5~8歳の知的な遅れのない自閉スペクトラム症の子どもにおいて、音に対する脳の反応が、同年齢の典型的な発達の子どもたちと比較して、早く起こることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大人間社会研究域の吉村優子准教授、医薬保健研究域医学系精神行動科学の菊知充教授、子どものこころの発達研究センターの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Molecular Science」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

自閉症スペクトラム障害の社会的コミュニケーション障害の背景には、乳幼児期からの言語発達や人の声などの聴覚情報を処理する能力の不全が関連していると考えられている。研究グループはこれまで、典型的な発達の子どもたちでは、人の声に対する脳の反応が、言語能力に関わっていることを報告していたが、人の声ではない、音に対する脳の反応と言語能力の関係については明らかにしていなかった。

また、海外の研究から、言語発達や知的発達に遅れのある、あるいは学齢期以降の自閉症スペクトラム症では、音に対する脳の反応は、典型的な発達の人々と比べて遅いという報告があったが、低年齢の言語発達や知的発達に遅れのない自閉スペクトラム症児では、音によって引き起こされる脳の反応の特徴やその言語能力との関連については、明らかにされていなかった。

自閉スペクトラム症児は音に対して起こる脳の左半球の反応が速く、音に対する脳の反応が速い子どもは言語能力が高い

研究グループは、この障害の聴覚的な情報処理や言語能力に関与する脳の仕組みを解明するため、自閉スペクトラム症の子どもたちと典型的な発達の子どもたちの脳の特徴を調査し、言語能力との関連を調べた。同研究には、5~8歳の知的障害のない自閉症スペクトラム症の子どもたち29人と、典型的な発達の子どもたち46人が参加。参加者には、音に対する処理能力を調べるため、音の刺激を聞いてもらい、その間、参加者の脳活動を非侵襲的な幼児専用のMEGを用いて測定した。また、言語能力の指標として、標準化された認知機能検査(K-ABC)のなぞなぞ課題(言語の概念的推論能力)を実施した。

その結果、自閉スペクトラム症の子どもたちは、典型的な発達の子どもたちに比べ、音に対して起こる脳の左半球の反応が速いことが判明した。さらに、言語能力との関係では、典型的な発達の子どもたちでは、音に対する脳の反応と言語の能力の間に関連は見られなかったが、自閉スペクトラム症の子どもたちでは、音に対する脳の反応が速い子どもは、言語能力が高いことがわかったという。

自閉スペクトラム症児の言語獲得に対する客観的理解の促進や指導方法の開発に期待

今回の研究成果により、小児期の自閉スペクトラム症の音の処理に関わる脳活動を捉え、自閉スペクトラム症のある子どもたちの言語の獲得や障害の背景にある脳の仕組みが明らかにされた。

「今後は、同研究成果をもとに、自閉スペクトラム症児の非典型的な言語発達についての客観的理解の推進や言語発達の客観的評価の方法の開発、自閉スペクトラム症の子どもたちの特性に合わせた言語発達支援法の開発などの展開が期待される」と、研究グループは述べている。

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