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「人工涙腺」の研究が前進、ドライアイの新規治療法開発も

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2021年03月25日 PM03:45

涙を流す人工的な涙腺

涙を分泌させる働きのある、人工的な“ミニチュア涙腺”の完成に一歩近づいたとする報告が、「Cell Stem Cell」に3月16日掲載された。涙腺を模倣したオルガノイドと呼ばれる三次元構造をもつ組織や器官を、実験室内で作成する技術を用いた研究の進歩によるもので、ドライアイやその他の涙腺障害の新しい治療法につながる可能性を秘めている。


画像提供HealthDay

論文の筆頭著者であるヒューブレヒト研究所(オランダ)のMarie Bannier-Hélaouët氏は、この研究成果について、「人間の涙腺がどのように涙を生成するのかの研究に使用できる。そればかりでなく、将来的には涙腺が機能していない人に、オルガノイドを移植することさえできるかもしれない」と語っている。

涙腺は眼窩(眼球が収まっている窪み)の上部にあり、涙を分泌している。涙は角膜を潤したり栄養を与えたりするほか、抗菌作用も併せ持っている。論文共著者の一人であるユトレヒト大学(オランダ)医療センターのRachel Kalmann氏は、「シェーグレン症候群などの涙腺の機能不全は、角膜や結膜の乾燥に続いて角膜潰瘍などの深刻な結果をもたらす可能性がある。重症の場合、失明につながることもある」と解説する。

ただし、ヒトの涙腺がどのように涙を分泌しているのか詳しいメカニズムは不明であり、それを研究するための信頼性のあるモデル動物もこれまで存在しなかった。今回の研究で研究者らは、オルガノイド技術を使用して、実験室内でマウスとヒトの涙腺のミニチュア版を成長させ、それを“泣かせる”方法を発見した。

Bannier-Hélaouët氏によると、「オルガノイドは成長刺激因子のカクテルを使用して成長する。オルガノイドを“泣かせる”には、成長刺激因子のカクテルに手を加える必要があった」と、同研究所のニュースリリースで述べている。完成したオルガノイドは、ヒトが痛みに反応して泣くのと同様に、ノルアドレナリンなどの化学的刺激に反応して“泣く”とのことだ。その際にオルガノイドの細胞は涙を内腔に分泌するため、オルガノイドは風船のように膨らむ。このためオルガノイドのサイズを涙の生成と分泌の指標として、研究に用いることが可能になるという。

また、別の共著者である同医療センターのYorick Post氏は、「追加で行った実験により、涙腺では異なる細胞がそれぞれ異なる涙の成分を生成していることも明らかになった。またそれらの細胞は、涙を誘発する刺激に対しても、異なる反応を示す」と解説。「将来的には複数のタイプの涙腺細胞を実験室内で成長させたいと考えている。それが実現できれば、最終的には完全な涙腺を成長させることができるのではないか」と展望を述べている。

さらに著者らは、このオルガノイドの別の用途として、「涙を十分に分泌できない患者のために開発される新薬のテストに利用したり、涙腺に発生するがんがどのように進行するのかを調べたり、その治療法の確立にも役立つ」と語っている。(HealthDay News 2021年3月16日)

▼外部リンク
Exploring the human lacrimal gland using organoids and single-cell sequencing

HealthDay
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