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小児がん対象の診療/療養の体験調査、「専門的な医療を受けられた」90.4%-国がん

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2021年03月09日 PM12:00

小児がん患者対象の初調査、患者の家族等が回答

国立がん研究センターは3月6日、厚生労働省からの委託事業の一環で、小児がん患者に対して診療体験、療養生活の実態を把握するための全国調査を行い、その結果を発表した。この調査は、同センターがん対策情報センターがん臨床情報部の東尚弘部長、渡邊ともね研究員、市瀬雄一研究員、松木明特任研究員、山元遥子特任研究員、今埜薫特任研究補助員の研究グループによるもの。

現在の日本のがん対策は、2007年に施行されたがん対策基本法に基づく、がん対策推進基本計画に沿ってさまざまな施策が行われている。2012年に策定された第2期がん対策推進基本計画には、がん対策の進捗を評価する指標を策定し、3年を目途に中間評価を行うことが盛り込まれた。今回の調査は、2017年度に策定された第3期がん対策推進基本計画の中間評価に向けて、小児がん患者の診療や療養環境の向上に役立てることができるよう、その実態を把握するため行われた。

調査期間は2019年9月~2020年4月。対象は、院内がん登録2014年および2016年症例全国集計参加施設において、当該年に治療が開始された診断当時18歳以下の患者を母集団とした全数調査とし、参加を表明した97の院内がん登録実施施設で、初回治療を受けた全悪性腫瘍の患者とした。調査票においては、先行実施している成人の調査票(2014年度、2018年度に全2回実施)を参考に、小児がん患者の体験に特異的な分野である「病状説明・告知」「」「長期フォローアップ」に関する質問を設定し、小児がん医療の特徴や課題を的確にとらえられるように工夫。家族等による回答(本人以外)とした。2,511人に対して調査票を発送し、1,221人(回収率48.6%)から回答があり、今回の報告書では、小児がん患者1,029人が解析・報告の対象となった。

主治医以外にも相談しやすい医療者がいた人は78.0%

治療に関する体験について以下のことがわかった。総合的な評価結果は、10点満点中8.4点(成人調査7.9点)、診断から治療まで1か月未満だった人は80.6%、専門的な医療を受けられたと思う人は90.4%、治療を進める上で医療者と十分な対話ができたと思う人は76.3%、主治医以外にも相談しやすい医療者がいた人は78.0%。医療スタッフとの関係や情報の取得、専門的な医療の提供、希望通りの転院など、成人との共通項目において、全体的に成人より肯定的な回答が多い結果だった。

小児がん患者をとりまく社会的なつながりに関しては、就学面、家族の就労、経済面からの評価がなされた。なかでも、就学状況への影響は診断時在籍校によって大幅に異なる結果となった。小学校、中学校の場合、転校が81.1%、59.3%最多であるが、高等学校では休学が61.3%と最多、退学も8.8%であった。転校・休学・退学を経験した患者のうち、教育の支援制度について、利用したものがなかったと回答した人は、小学校・中学校が6.9%、17.2%に対し、高等学校は61.1%を占めていた。

医療費を確保するために生活へ何らかの影響があった人は41.7%

患者家族の就労については、患者のケアのために仕事や働き方を変えた家族がいた人は65.5%、休職・休業した人は35.7%、退職・廃業した人は32.8%という結果だった。経済的状況に関しては、医療費を確保するために生活へ何らかの影響があった人は41.7%。医療費以外に経済的負担が大きいものとして何らかの事例をあげた人は85.8%で、具体例として最多のものは交通費60.7%、付き添い家族の生活費・宿泊費57.8%だった。家族の悩みや負担を相談できる支援・サービス・場所が十分にあると思う人は39.7%に留まることから、がん患者家族への支援についても課題が残されていることが明らかになった。

教育機会の提供はサバイバーシップ支援の点からも重要

小児がん診療において、医師以外にも臨床心理士や社会福祉士など、心のケアや療養のサポートを行なうさまざまな職種がかかわる診療体制作りが関連している可能性がある。また、就学に関しては、小学校、中学校に比較して、高等学校に就学していた患者は退学の割合が高く、情報提供、支援の利用ともに低い傾向となっていた。第3期がん対策基本計画では、がんになったその後を生きていく上で直面する課題を乗り越えていくためのサポート「」を取り組むべき課題の一つとしてあげており、教育機会の提供は、サバイバーシップ支援の点からも重要と考えられる。

「小児がん患者を対象とした初めての大規模調査のため、成人調査との比較を行ったが、あくまで参考値であり、その解釈は慎重に行う必要がある。今後も調査を行うことで、経年的にエビデンスを蓄積し、継続した評価体制を維持することが、がん医療発展にとって重要だ」と、研究グループは述べている。

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