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大規模国際共同研究で、開放隅角緑内障に関連する127の遺伝的座位を同定-東北大ほか

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2021年03月04日 PM12:00

世界14か国の開放隅角緑内障患者3万人以上の遺伝情報についてゲノム解析

東北大学は2月25日、世界14か国の開放隅角緑内障患者3万人以上の遺伝情報についてゲノムワイドメタ解析を行い、開放隅角緑内障に関連する127の遺伝的座位を同定したと発表した。これは、同大大学院医学系研究科眼科学分野の中澤徹教授、同大東北メディカル・メガバンク機構機構長の山本雅之教授、理化学研究所統合生命医科学研究センターの久保充明副センター長(研究当時)らをはじめとする国際共同研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Communications」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

緑内障は視神経が障害を受けることで視野が狭くなる眼疾患で、世界中で主たる失明原因となっている。緑内障の主要な病型である開放隅角緑内障の有病率には民族集団差があり、ヨーロッパ系民族集団に比して、アフリカ系民族集団やアジア系民族集団で高いことが疫学調査より明らかになっている。しかし、開放隅角緑内障患者における遺伝要因の民族集団差の大部分は解明されていなかった。

研究グループは今回、開放隅角緑内障の発症に関わる新たな遺伝要因を明らかにするため、多民族集団の開放隅角緑内障患者3万4,179人と対照群34万9,321人(ヨーロッパ系民族集団:患者2万3,963人、対照群30万6,942人、アジア系民族集団:患者6,935人、対照群3万9,588人、アフリカ系民族集団:患者3,281人、対照群2,791人)を対象に、ヒトゲノム全体に分布する一塩基多型(SNP)のゲノムワイドメタ解析を行った。なお、同研究で使用したアジア系民族集団のサンプルの大部分(患者:5,246人、対照群:3万2,795人)は、バイオバンク・ジャパン、東北大学眼科、東北大学東北メディカル・メガバンク機構において収集されたものを用いた。また、東北大学でのゲノムワイド遺伝子型データの取得には、(R)を用いた。

ヨーロッパ系民族集団の開放隅角緑内障患者に関連する多くの遺伝的座位が、アジア・アフリカ系民族でも一致

解析の結果、127か所の遺伝子領域が開放隅角緑内障との関連を示し、そのうち44カ所は今回新たに発見されたものだった。さらに、開放隅角緑内障と強い関連が認められたSNPについて、独立したヨーロッパ系民族集団(患者:4万3,254人、対照群:177万1,118人)を解析した結果、これらの遺伝子領域が開放隅角緑内障に関係していることを再確認できた。また、これらの遺伝子領域の多くが、眼圧、垂直Cup/Disc比、網膜神経線維層厚といった緑内障の指標と関連することが明らかとなった。さらに、開放隅角緑内障の発症に関わる遺伝要因の民族集団ごとの違いを明らかにするため、ヨーロッパ系民族集団で開放隅角緑内障と強い関連が認められたSNPについて、他の民族集団における発症リスクへの影響を検証したところ、両者の間に高い相関が見られた。これは、多くの開放隅角緑内障の発症に寄与するSNPの影響度が民族集団に共通していることを示している。

今回の成果が緑内障病因の解明や治療法の開発や予防医学研究に貢献する可能性

さらに、開放隅角緑内障と関連が示された遺伝子の特徴を明らかにするため、パスウェイ解析を行ったところ、コラーゲン形成、血管系の発達、脂質結合および輸送に関する遺伝子群が発症に影響している可能性を突き止めた。また、同研究から開放隅角緑内障の病態に影響することが疑われた候補遺伝子を標的とする薬剤について検証した結果、網膜疾患やアルツハイマー病、虚血性心疾患を対象に、すでに使用されている、あるいは治験が実施されている薬剤が有用である可能性が明らかとなったとしている。

今回の研究成果は、ゲノム医療実現推進プラットフォーム事業で進められている「失明回避を目指す開放隅角緑内障の遺伝的リスク予測に関する研究開発」で、日本人集団を対象とした開放隅角緑内障のリスク予測法の開発にも活用される予定。同成果は今後、緑内障の病態解明と個別化医療の一助となる可能性が期待される、と研究グループは述べている。

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