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小児OSAの小下顎症、低酸素状態が下顎骨の軟骨性成長を障害-東京医歯大ほか

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2021年01月15日 PM12:00

睡眠呼吸障害による軟骨性成長への影響、モデル動物で解析

東京医科歯科大学は1月13日、小児の閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)における小下顎症の発症・進展の病態として、その特徴である、就寝中における無呼吸と呼吸再開の繰り返しによって生まれる低酸素状態が、下顎骨の軟骨性成長を障害することを突き止めたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科・咬合機能矯正学分野の小野卓史教授、細道純講師およびLekvijittada Kochakorn大学院生(ジョイント・ディグリー・プログラム学生としてタイ・チュラロンコーン大学にも所属)ら、東京医科大学基礎社会医学系社会医学法医学分野の吉田謙一教授、前田秀将准教授、東京大学医学部・先端臨床医学開発講座の故鈴木淳一特任准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

OSAは、就寝中に上部気道が閉塞し、いびきとともに何回も呼吸が止まることを繰り返す疾患。小児においては、全身成長の遅延、学習発達障害、情緒不安定、さらに糖尿病や高血圧症などの生活習慣病を誘発することから、小児医療における大きな問題となっている。小児OSA患者は下顎の後退()や歯並びの狭窄を呈することから、小児OSAと顎骨の成長障害の両者を結ぶメカニズムの存在が考えられている。しかし、成人の睡眠呼吸障害と比べて小児の睡眠呼吸障害に関する調査や病態を解明した研究は少なく、小児OSA患者における成長障害の発症・進展のメカニズムについては、未だ不明な点が多く残されている。

小児OSAにおいて睡眠中に反復される呼吸の停止と再開は、夜間の間欠的低酸素(IH)血症を生み出し、睡眠の分断化や質の低下のみならず、酸化ストレスや交感神経系の興奮を介してさまざまな生活習慣病の病態を生み出す。また、IHへの曝露は、成長ホルモンの分泌低下を招き成長障害をもたらす可能性が考えられる。

そこで今回の研究では、小児OSAの睡眠呼吸障害が成長期における顎骨の成長障害の原因となるのか、小児OSAの呼吸病態を再現したIH曝露モデル動物を開発し、睡眠呼吸障害による軟骨性成長への影響を詳しく解析した。

IH曝露、TGF-βとSOX9発現減少を介して下顎の軟骨性成長を障害

研究グループは、小児OSAの疾患モデル動物として小児OSAの呼吸病態を再現したIH曝露ラット(IHモデル)を作製し、顎関節軟骨の成長が活発である新生児期を対象に解析を実施。その結果、IH曝露は下顎の成長中心である下顎頭の骨密度の増大とともに、下顎骨の成長抑制を有意にもたらすことが判明した。一方、対照ラット(正常モデル)の四肢の骨(脛骨)においては、そのような成長変化は認められなかった。

IH曝露による下顎骨の成長障害の詳細な背景を探るため、成長中心である下顎頭の組織学解析を行ったところ、関節軟骨の減少が認められた。また、軟骨組織の遺伝子発現解析の結果、IHモデルにおいて、軟骨増殖を促す成長因子トランスフォーミング増殖因子(Transforming Growth Factor-β:TGF-β)と転写因子(SRY-box9:SOX9)の両因子の発現が有意に減少し、肥大軟骨細胞に主に認められるX型コラーゲン(Col10a1)の発現が増大していることが判明した。

これらの結果から、新生児期のIH曝露は、TGF-βおよびSOX9の発現減少を介して下顎の軟骨性成長を障害することが初めて明らかになった。

小児OSAにおける成長障害の新規診断・予防の分子標的となる可能性

睡眠障害に関する疫学調査により、極東アジア人における睡眠障害の有病率は白人に比べて高く、モンゴロイドのもつ短頭型、すなわち「奥行きが浅い」顎顔面骨格が極東アジア人のOSAの発症や進行の主因であることから、OSAと顎顔面の成長障害との間には強い関連がある。また、小児肥満が増加の一途をたどる日本においては、咽頭側壁や舌への脂肪沈着による上部気道の狭小化と形態学的に不利な特徴の重畳により、小児OSA患者数が増加することが予測される。とりわけ、未熟である乳幼児期においては、睡眠中の呼吸障害が、全身の調和のとれた成長を妨げるとともに、全身のさまざまな臓器に波及し、生涯にわたり重篤な後遺症をもたらすリスクを増大する可能性がある。

小児OSAは、成人と比較して疾患研究の歴史が浅いことから、同疾患における成長障害の詳しいメカニズムの解明を行った臨床研究や疾患動物モデルによる基礎研究は、国内外を問わず非常に少ない状況だった。

今回の研究で得られた成果は、世界で初めて小児OSAにおける成長障害の新たな診断・予防の分子標的の可能性を示すともに、睡眠呼吸障害による成長障害の発症リスクの根拠を明示することにより、小児期における睡眠呼吸障害のスクリーニングの重要性を啓発することが期待される、と研究グループは述べている。

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