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出生直後の新生児で作動する、脳幹内のシグナル伝達システムを発見

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2020年12月21日 PM03:15

新生児の最初の呼吸が重要な理由とは

新生児が初めて呼吸を始めるときに何が起こっているのかを調べた研究から、)の原因解明につながり得る知見が得られた。米バージニア大学医学部のDouglas Bayliss氏らはこの研究で、脳幹内のシグナル伝達システムが出生直後に作動し、生後間もない段階での呼吸を助けていることを突き止めたのだ。詳細は、「Nature」に12月2日発表された。


画像提供HealthDay

最初は脆弱な状態であった呼吸が、どのように生涯にわたって全身に酸素を供給する、頑強で安定した生理システムへと変化するのか。今回明らかになった研究結果は、この疑問を解き明かす助けとなるものだ。

研究グループはマウスを用いた実験により、呼吸を選択的に制御するニューロンのクラスター内で、ある遺伝子の発現が、出生後すぐにオンに切り替わることを発見した。この遺伝子の働きにより、(下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド)と呼ばれる神経伝達物質が、出生と同時に産生され、肺呼吸の調節が行われるようになると考えられた。

生まれる前の胎児は呼吸する必要がないため、出生に伴い肺呼吸へ移行するまでの間は、極めて不安定な状態に置かれる。Bayliss氏はこの点について、「新生児にとって出生は大きな衝撃を受ける出来事だ。出生を機に、呼吸をはじめとする重要かつ多岐にわたる身体機能を自分で制御する必要が出てくるからだ」と説明。その上で、「この出生時のサポートシステムの作動が、肺呼吸に切り替わる間の新生児を守る特別な保護要因となっているというのが、われわれの考えだ」と話す。

研究グループがPACAPの働きを抑制してみたところ、マウスに呼吸障害や危険な無呼吸の状態が引き起こされることが判明した。また、無呼吸は環境温度の変化に伴って悪化することも示された。このことは、神経ペプチドシステムの障害が、乳児のSIDSやその他の呼吸障害に対する感受性を高める可能性を示唆している。ただし、動物実験の結果が、必ずしも人間に当てはまるわけではないことに留意が必要である。

1歳未満の乳児に原因不明の突然死をもたらすSIDSは、西欧諸国で乳児の主な死因となっている。SIDSには遺伝的因子と気温などの環境要因の双方が関与していると考えられている。PACAPは、出生時に呼吸ネットワークによって大量かつ特異的にスイッチがオンに切り替わる、最初のシグナル分子であり、これまでにも乳児のSIDSに遺伝的に関連していることが報告されていた。とはいえ、研究グループによると、SIDSの原因は複雑であり、現時点では明らかになっていない重要な要因が他にも存在する可能性があるという。

Bayliss氏は「これらの研究結果から、呼吸を含めた重要な機能を制御するシステムに、出生に伴う変化が他にも起きている可能性が浮上した」と指摘。また、「これが、新生児の重要な移行期にさまざまなフェイルセーフ・サポートシステムが作動する基本原理なのかどうかは、現時点でははっきりとしない。しかし、そうしたサポートシステムの解明を進めることで、新生児のシステム障害の治療を向上させることができる可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2020年12月10日)

▼外部リンク
A brainstem peptide system activated at birth protects postnatal breathing

HealthDay
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