食事時間の乱れは心疾患のリスクを高める
健康維持のためには、何を食べるかだけではなく、いつ食べるかに気を付けるべきだとする研究結果が、米コロンビア大学アービングメディカルセンターのNour Makarem氏らにより報告された。平日と週末の食事を取る時刻(以下、食事時間)の変動が、腹囲、体脂肪、血圧、血糖値などの重要な健康リスク因子に関連することが明らかになったという。この知見は、米国心臓協会学術集会(AHA Scientific Sessions 2020、11月13~17日、バーチャル開催)で報告された。

画像提供HealthDay
Makarem氏らの研究は、AHAのGo Red for Women Strategically Focused Research Network(SFRN)に参加している、多様な人種・民族から成る女性116人(20~64歳)を対象にしたもの。参加者は1週間にわたり食事時間と食事内容を電子食事日記に記録した。116人中99人は1年後に再度、同様の食事日記を記録して提出した。同氏らは、この記録を基に、対象者の日ごとの食事時間、食事にかける時間、夜間の食事、および「食事の時差ボケ」(平日と週末の食事を取る時間の差)について調査した。また、参加者の1日のうちでの最初と最後の食事の時刻、毎夜の絶食時間(nightly fasting duration;NFD)、午後5~8時の間に摂取したカロリーが占める割合についても調べた。
その結果、食事パターンの日ごとの変動については、午後5時以降のカロリー摂取の不一致が10%増えるごとに、1年間で収縮期血圧(上の血圧)が約3ポイント、拡張期血圧(下の血圧)が2ポイント以上上昇することが明らかになった。また、糖尿病の診断における指標であるHbA1c値にも有意な変化が認められた。さらに、8時以降のカロリー摂取の日ごとの変動でも、腹囲の約2.3cmの増加やBMIの0.5ポイントの増加と関連することが示された。
一方、平日と週末の差に注目すると、食事時間や夜間の食事の程度、食事にかける時間の変動の増加が、1年後の収縮期・拡張期血圧の上昇とBMIの増加に関連していた。
では、土曜の遅めのブランチは諦めた方がいいのだろうか。Makarem氏は、「その必要はない」と話す。その理由を同氏は、「週末の食事を取る時刻が悪いとは限らない。社会的な時計に従わざるを得ない平日と違い、週末は自然な生物学的時計に従っているのだから」と説明する。
Makarem氏は、体が環境と同期し、最適な時間に機能するのを可能にしているものとして、身体の概日リズム(日中と夜間の24時間サイクルに適応して進化した生理学、行動、代謝の先天的な自然のリズム)を引き合いに出す。そして、「概日リズムは、脳の“マスタークロック”により制御されているものの、心血管疾患リスクに影響を及ぼす代謝過程に関与する個々の器官などには、独自の時計がある。そのような時計は食事の摂取により規制されている」と説明する。
この研究には関与していない、米ハーバード大学医学大学院教授のDeepak L. Bhatt氏は、「食事を取る時刻、睡眠、心臓の健康は、いずれも連動しており、関連を正確に特定するのは難しい」と指摘。その上で、「今回の研究は、何を食べるにしても、そのタイミングが重要であることを強調するものだ。睡眠サイクルの時間や、平日と週末の睡眠は制御できなくても、いつ食べ物を口に入れるかは制御できるのだから」と述べている。
なお、学会発表された研究結果は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。
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