医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 「飲み会」における新型コロナ集団感染事例公表、一般的対策に加え新たな提言-感染研

「飲み会」における新型コロナ集団感染事例公表、一般的対策に加え新たな提言-感染研

読了時間:約 4分21秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年10月29日 PM12:45

具体的情報が得られた6事例、カラオケは除く

国立感染症研究所は10月28日、いわゆる「」における新型コロナウイルスの集団感染事例についてまとめた内容を公表した。この公表は、新型コロナウイルス感染症()の実地疫学調査において国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(FETP)が経験した実例を提示し、感染防止のために留意すべき事項について広く多くの人に情報提供を行うことを目的として行われたもの。したがって、特定の個人の行動や店舗内の状況を詳細に伝えることを意図したものではない。


画像はリリースより

今回、2020年10月15日時点において、2020年2月25日以降に、クラスター対策班として実施された実地疫学調査のうち、いわゆる「飲み会」の際に発生したと考えられた集団感染事例(同一店舗内で2例以上の確定症例が確認された事例)につき、具体的な知見等につながる情報が得られた6事例をピックアップ、それらの曝露状況に関する情報が記述された。なお、カラオケが併せて行われたことが確認された事例については、今回、対象から除外された。

客同士の感染が多くアクリル板設置でも感染、マスクをした従業員にも感染

結果、同グループの客-客間の伝播事例が5例、別グループの客-客間が3例、客-従業員間が2例だった(複数経路の事例あり)。

同グループの客-客間の事例において、ケースAでは発症者に座席が近い4人が感染し、対角線上に距離が離れた座席の者は感染しなかった。また、飲み会開催時に参加者の1人がすでに咳症状を呈していた。ケースBでは、店内に窓がなく、換気状況が不良の個室内の事例であり、同席した同グループ内の客は全員感染した。またケースEでは、ケースBと同様に窓がなく、換気状況が不良の個室内の事例であり、隣席の客と肩がぶつかるほどの距離であり、人が密な環境であった。

一方、別グループの客-客間の事例では、それらに加えて、客が座席移動して別グループの客と一緒に会話・飲食したり、飲用容器の共用(飲み物の回し飲み等)をしたりすることによって感染したとみられる事例を認めた。

また、2例認められた客-従業員間の事例について、ケースDでは、従業員はマスク着用をしていたにもかかわらず、客(マスク着用無し)と会話を多くしていた従業員の感染が認められ、ケースFでは、客と同じテーブル等に着席し、長時間滞在・飲酒した等、客(マスク着用無し)と密接な関わりをした従業員(マスク着用状況不明)の感染が認められた。

ケースCでは飛沫対策として、客席のテーブル両端に高さ30㎝程度のアクリル板を設置していた。ケースDでは店内は十分なスペースがなく、換気のため出入口を開放していた。

換気不良、小さな店内など改善・注意が必要

今回の結果から、いわゆる飲み会の事例では、客-客間の伝播が多く見られ、「十分な距離を保てない状況下での飛沫」「発症者が同グループの同席に存在」「店内の換気不良」「人が密な空間での飲食」等によって感染したとみられる事例を認めた。ベトナムや中国の事例によると、換気の悪い混雑した屋内環境が原因での感染拡大報告や、店内のエアコンの気流の方向と飛沫の伝播が一致したという報告があり、その中で、感染の蔓延を防ぐため、テーブル間の距離を取ること、そして店内の換気を改善することが必要であると述べられていた。

一方、今回、客から従業員への伝播事例はわずか2例のみで、これらの事例はいずれも客と会話を多くしていたり、客と同じテーブル等に着席し、長時間滞在・飲酒をする等、密接な関わりをしていたりするもので、その他の事例では従業員のCOVID-19の感染は見られなかった。したがって、通常の飲み会時において、従業員が一般的な咳エチケット(マスク着用等)や適切な手指衛生を行うことによって、客から従業員へ感染する可能性を下げることが推察された。ただし、ケースDの事例においては、当該従業員はマスクを着用していたものの、感染者との近距離で会話等を実施したことにより感染した可能性が考えられることから、一方のみのマスクの着用だけでは完全に感染を防ぐことができないことも示唆された。

また、いわゆる飲み会での事例の特徴として、別グループの客-客間の伝播と思われる事例が3例認められた。これら3例では、「参加人数が多く、人が密集しやすい環境であった」「多数の人(別グループの人も含む)と接触し会話した」「席移動が頻繁に行われた」「飲み物の回し飲みがみられた」等が認められた。

ケースCでは一般社団法人日本フードサービス協会、全国生活衛生同業組合中央会作成の「外食業の事業継続のためのガイドライン」に従い、テーブル上でアクリル板の設置を行っていたが、高さが十分でなく、テーブルの両端に設置されていたため、対面や隣席同士に座った客からの飛沫を防止する効果は少なかったことが示唆された。ケースDの事例においては、店内はカウンター席と小上がり席のみからなる小規模の店舗内の事例であり、換気状況が良好でなかったことから、出入口2か所を開放し、扇風機を使用する換気方法を実施していたが、近距離間の会話によって感染伝播した可能性が考えられた。国では『「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法』で機械換気(空気調和設備、機械換気設備による換気)が実施できない場合には窓の開放やドアを開けることによる換気を推奨しているが、客-客間に十分な距離が保てない小規模の店舗等の場合には特に注意を要するものと考えられた。

3密を避け、回し飲みは行わず、体調に異変があったら参加しない

飲酒そのものが感染リスクを上げるわけではない。一方で、一般的にいわゆる飲み会ではしばしば宴会や催し等の場合に参加者の増加や開催時間が長くなることによる接触機会の増加が見られる。これらの特性および今回わかったことを通じて、今後の感染対策として、一般的な感染対策であるマスク着用、手指衛生、従業員の健康管理、身体的距離の確保、店内のこまめな換気の実施等に加え、客側と従業員側、両方の立場に対して次の提言が行われた。

<客>
・客-客間での感染伝播が主であることから、体調不良者、または少しでも異変を感じる場合はイベントや宴会に参加しない
・自らが感染源になるリスクを極力おさえるため、日頃から感染機会(3密)を避け、正しいマスク着用、手指衛生を心掛ける
・回し飲み(通常飲用に用いる容器の共用)を行わない
・不要な従業員や別グループへの接触を避ける

<従業員>
・客同士が密集しないような店内レイアウト・座席配置の工夫(特に宴会・イベント時)
・席移動の制限

なお、今回の内容に関する解釈上の注意点として、「当該店舗の利用が単一の感染機会か確定できていない事例が存在する」「主に感染者自身からの聞き取りの結果に基づいており、本人の記憶に依存している」「床面積、換気状況、店内BGMの有無や大小、衛生管理等の店舗内環境や当日の座席位置、人数、会話の頻度、友人関係、マスク着用状況、酒量、酔いの度合い、一次会、二次会、三次会等明確な店利用状況等の詳細情報が調査により得られていない事例が存在する」ことが挙げられている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 脊髄損傷、HGF遺伝子発現制御による神経再生の仕組みを解明-藤田医科大ほか
  • 抗がん剤耐性の大腸がんにTEAD/TNF阻害剤が有効な可能性-東京医歯大ほか
  • 養育者の食事リテラシーが低いほど、子は朝食抜きの傾向-成育医療センターほか
  • 急速進行性糸球体腎炎による透析導入率、70歳以上で上昇傾向-新潟大
  • 大腿骨頭壊死症、骨粗しょう症薬が新規治療薬になる可能性-名大