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妊娠後期の血中カドミウム高濃度で、胎児の成長が抑制される可能性-富山大ほか

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2020年10月05日 PM12:45

海外では、妊婦の血中カドミウム高濃度で出生体重減少などの報告

富山大学は10月2日、妊娠中の母親の血中カドミウム濃度と新生児の出生時体重、身長、頭囲および胸囲との関連について男女別に調べた結果、女児の中で最も血中カドミウム濃度が低いグループと比較して濃度が最も高いグループではsmall-for-gestational-age()となる出生児が1.9倍多かったことがわかったと発表した。この研究は、同大エコチル調査富山ユニットセンター、国立環境研究所エコチル調査コアセンターの研究グループによるもの。研究成果は、環境保健の国際専門誌である「Environmental Research」に掲載されている。

子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、)は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度より全国で10万組の親子を対象として開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査だ。母体血や臍帯血、母乳等の生体試料を採取保存・分析するとともに、参加する子どもが13歳になるまで追跡調査し、子どもの健康に影響を与える環境要因を明らかにすることを目的としている。エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施調査期間は5年間のデータ解析期間を含み、令和14(2032)年度までを予定している。

赤ちゃんは、一定の期間を母親のお腹の中で過ごし、十分に成長してから出生する。しかし、十分に成長できず小さな体格で生まれると、小児期の疾患や成人になってから慢性疾患にかかるリスクが高くなることが指摘されている。そのため、母親の体内で赤ちゃんの成長に悪影響を与える物質について調べる研究は重要だ。

母親のカドミウム摂取と赤ちゃんの胎児期の成長との関連については、これまで海外で調査が行われていた。その中では、妊娠中の母親の血中カドミウム濃度が高いと出生体重が減少する、あるいは、新生児の出生体重が、在胎週数に見合う標準的な出生体重に比べて小さい状態を指すSGA児の出生が多くなるという報告があった。しかし、調査によって結果が異なっており、より精度の高い研究が求められていた。


画像はリリースより

1万7,584人の血中カドミウム濃度と、新生児出生時の体重・身長などの関連を解析

研究グループは、平成28(2016)年4月固定「出産時全固定データ(新生児の情報)」および平成29(2017)年4月に固定された金属類第一次固定データ(妊婦2万人に関する元素の血中濃度)を使用し、そのうち1万7,584人の妊婦の血中カドミウム濃度と、その妊婦から生まれた新生児の出生時の体重、身長、頭囲、胸囲との関連について解析を実施。また、SGA児の出生割合の解析も行った。

解析には、妊娠中に血中カドミウム濃度を測定した母親と、双子や三つ子ではない単胎の新生児1万7,584組からの情報を使用。赤ちゃんの出生時の体格は、母親の年齢、体格、妊娠中の栄養摂取の状況など複数の要因が関連して決まると考えられる。そこで、赤ちゃんの体格に影響を与えると考えられる複数の要因も同時に検討し、統計学的な手法を用いてそれらの影響を取り除く分析を実施した。

国内の妊婦1万7,584人について妊娠中・後期に採血を行い、血中カドミウム濃度をICP-MS法で測定したところ、血中カドミウム濃度は、0.11〜4.73μg/L(中央値0.66μg/L)だった。血中カドミウム濃度の最も低いグループをQ1とし、濃度別にQ4までに分類して、4グループにおける出生時体格と検討。これまでの海外の研究からは、男児より女児で影響が出やすいという報告があったため、性別に分けて解析した。また、カドミウムの影響は、妊娠時期により異なる可能性がある。そのため、血中カドミウム濃度を測定した時期別に、妊娠中期(14〜27週)と妊娠後期(28〜40週)に分けた解析も実施した。

血中カドミウム濃度最低値群(Q1)と比べ、より濃度が高い群(Q3、Q4)で出生体重の平均値が減少傾向

血中カドミウム濃度が最も低いグループ(Q1)と比べ、濃度が高いQ2、Q3、Q4において、出生体重、身長、胸囲、頭囲の平均値に差があるかを確認したところ、出生体重の平均値は、Q1と比べ、Q3、Q4では減少する傾向が見られた。

性別や採血時期に分けた検討では、男児において、いずれの採血時期においても、Q1と比べより濃度が高いグループの間で出生体重、身長、胸囲、頭囲に何らかの傾向は認められなかった。しかし、女児における、妊娠後期に血中カドミウム濃度を測定したグループに関しては、Q1と比べ最も濃度が高いグループ(Q4)で出生体重と胸囲の減少が認められたという。

女児を妊娠中の母親が妊娠後期にカドミウム高濃度で、SGA児出生が1.9倍多く

今回は、SGAの判定に、日本小児科学会が日本国内の出生児の体重をもとに算出し、2014年に発表した基準値を使用。この分析では、帝王切開で生まれた子を除いた1万3,969組の母子を検討した。

その結果、男児の検討において、妊娠中期、妊娠後期ともに、Q1と比べより濃度が高いグループの間でSGA児が生まれるリスクに差はなかった。一方、女児において、妊娠後期にカドミウム濃度を測定したグループに関しては、Q1と比べQ4でSGA児が1.9倍多く生まれた。妊娠中期にカドミウム濃度を測定したグループでは、女児の濃度が高いグループでもSGA児が生まれる割合が上昇しなかったという。

妊娠中の体内カドミウムの影響を断言できる結果ではなく、今後も検討が必要

今回の研究では、妊娠後期(28週以降)の血中カドミウム濃度が高値の場合、低値の場合と比較して、女児の出生時体重と胸囲が減少し、SGA児が生まれる割合が高くなることが示された。この結果から、「妊娠後期の血中カドミウム濃度量が高いと胎児の成長が抑制される可能性」が示唆されるが、今回の報告から直ちに妊娠中の体内カドミウムの影響を断言できるものではない、としている。

今回の研究では、血中カドミウム濃度差、男女差、採血した妊娠期による差が観察されたが、その理由は明らかではない。今回の解析では、赤ちゃんの体格に関連する複数の項目を考慮したが、喫煙や飲酒といった項目は母親の質問票の回答から得ており客観的なデータではない。また、カドミウム以外の化学物質濃度や遺伝的な背景については考慮できていない。さらに、カドミウムを測定した採血の時期を、妊娠中期、妊娠後期と区別したが、いずれかで測った人をグループ化したのみで、両時期で測定した経時的な変化を考慮したわけではない、としている。

研究グループは、これまでの研究より多い1万7,584組の母子で確認できた点、カドミウム濃度の採血時期を明確にして確認した点で、これまでの研究より精度が高い報告だとし、一方で、同研究から示唆された「妊娠後期の血中カドミウム濃度量が高いと胎児の成長が抑制される可能性」を明確にするために、今後さらに別の検討を行って確かめていく必要がある、とコメント。エコチル調査では、引き続き環境因子、社会経済的因子、遺伝的要因について調査し、子どもの発育や健康に影響を与える要因を検討していく、としている。

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