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ボトックス注射がうつ病を緩和?約4万人のデータで判明

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2020年08月11日 PM03:30

ボトックス注射がうつ病を緩和?

しわ取りや片頭痛の治療などに用いられるボツリヌス毒素(ボトックス)注射に、うつ病を緩和する作用のある可能性が、新たな研究で示された。ボトックス注射が用いられる8種類の症状に対する治療のうち6種類で、他の方法で治療された患者よりもボトックスが用いられた患者は、治療後にうつ病が報告される頻度が40~88%低かったという。「Scientific Reports」7月30日オンライン版に論文が掲載された。


画像提供HealthDay

論文の筆頭著者で、米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)薬学部および米食品医薬品局(FDA)研究員のTigran Makunts氏は、「この知見は、有病率の高い精神疾患の一つである、うつ病に対する新たな治療法の可能性を示すものだ。小規模な観察ではなく、極めて大規模なデータに基づく結果であることから期待がもてる」と述べている。

今回の研究では、FDA有害事象報告システム(FAERS)の記録から、ボトックス治療を受けた約4万人の患者データが用いられた。治療目的を、(しわ取りなど)、、手足などの痙攣、斜頸・首の痛み、まぶたの痙攣、多汗症、唾液分泌過多、膀胱疾患(神経因性膀胱、排尿切迫感、尿失禁など)という8種類に分類。それぞれについて、ボトックス治療を受けた患者とボトックス以外の治療を受けた患者に分け、有害事象として報告された、うつ病とその関連事象(気分の抑うつ、希死念慮、自殺未遂・既遂など)の頻度を比較した。

その結果、8種類の治療目的のうち6種類で、ボトックス治療を受けた患者の方が、うつ病やうつ関連症状の報告が有意に少ないことが明らかになった。治療目的別の報告オッズ比(ROR)は、美容では0.46(95%信頼区間0.27~0.78)、片頭痛は0.60(同0.48~0.74)、手足などの痙攣0.28(同0.18~0.42)、斜頸・首の痛み0.30(同0.20~0.44)、まぶたの痙攣0.13(同0.05~0.39)、多汗症0.12(同0.04~0.33)だった。唾液分泌過多と膀胱疾患のRORは低い傾向にあったが、有意ではなかった。

ボトックスがうつ病に対し抑制的に働く機序について、研究グループは「詳細を明らかにするには、さらなる研究を重ねる必要がある」と述べている。その上で一つの仮説として、ボトックスが気分や情緒に関与する中枢神経系に到達する可能性を指摘している。またボトックスは、うつ病の誘因となる慢性症状の治療に用いられることが多いため、それら基礎疾患の治癒に伴う副次的効果として気分の改善に寄与する可能性もあるという。

世界保健機関(WHO)によれば、世界で2億6400万人を超える人がうつ病を経験している。うつ病は通常、心理療法や薬物療法により治療されるが、約3分の1の患者にはそれらの効果が見られず、他の治療法の開発が求められている。

研究を率いたUCSD薬学部教授のRuben Abagyan氏は、「美容目的でボトックス注射を施行した後に、うつ病が改善したという事例は以前から報告されていた」と述べている。その機序について「従来は、例えばしわを取ることにより、負の感情が強化されるという悪循環を断つことができ、うつ病が改善すると考えられていた。しかし今回の研究では、注射部位にかかわらず効果が認められたことから、効果発現の機序はそれほど単純なものではないと考えられる」と同氏は解説している。

うつ病患者を対象としたボトックス治療の臨床試験が現在進められている。ただしAbagyan氏によると、その臨床試験では額への注射の効果のみを検討しているため、「うつ病治療に最適な注射部位と投与量を決定するために、他の試験が必要になる可能性がある」という。(HealthDay News 2020年7月30日)

▼外部リンク
Postmarketing safety surveillance data reveals antidepressant effects of botulinum toxin across various indications and injection sites

HealthDay
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