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経腟分娩による「痛みの感じ方」、実はある遺伝子変異が関与している?

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2020年08月07日 PM02:00

分娩時の痛みを鎮痛薬なしで我慢できるかどうかは遺伝子で決まる?

出産に伴う痛みを和らげるために鎮痛薬を必要としない女性は、鎮痛薬のように働く遺伝子変異を持っている可能性があるとする研究結果を、英ケンブリッジ大学麻酔科学のMichael Lee氏らが「Cell Reports」7月21日号に発表した。


※イメージ

出産で経験する痛みや不快感の程度は人によってさまざまだ。そこで、Lee氏らは今回の研究で、なぜ一部の女性では、陣痛や分娩時の痛みがそれほど強くないのかを調べることにした。

Lee氏らは、合併症のない経腟分娩で鎮痛薬を要求しなかった初産婦(実験群)189人のうちの39人と、分娩時に鎮痛薬を要求した女性(対照群)33人を対象に、腕に熱と圧を加え、手を冷水に入れてもらう検査を行い、痛みの閾値を測定した。また、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)などの質問票で心理状態を測定するとともに、コンピューター化された評価ツールで認知機能を評価した。

その結果、実験群では対照群に比べて、熱や冷水、圧に対する痛みの閾値が高いことが分かった。一方、心理状態や認知機能に関しては、両群間に差が認められなかったことから、痛みの感じ方には内因性の違いがあることが示唆された。Lee氏は、「分娩時に、麻酔ガスや硬膜外麻酔の使用を求めない女性はあまりいない。特に、初産の女性は、麻酔を求めることが多い。われわれが、麻酔を必要としなかった女性たちを調べたところ、こうした女性たちは痛みを感じる閾値が一般の女性たちよりも高いことが分かった」と話している。

次に、実験群189人のうちの158人と対照群に対して遺伝子検査を実施したところ、実験群では、4人がKCNG4遺伝子のレアバリアント(一般人口において1%未満の頻度で発生する遺伝子変異)を保有しており、この数字は予測された数字(1.1)よりもはるかに高いことが明らかになった。Lee氏らの説明によると、KCNG4遺伝子は、神経細胞を流れる電気信号を制御するゲートと呼ばれる開閉機構に関わりを持つため、この遺伝子に変異があると、神経細胞から脳への痛みのシグナル伝達が阻害されるという。

共著者で同大学薬理学のEwan St. John Smith氏は、「分娩時に強い痛みを感じなかった女性では、KCNG4の遺伝子変異により、神経細胞上にスイッチが形成されにくくなっている可能性がある。これは実のところ、硬膜外麻酔と同じような働きだといえる。すなわち、スイッチをオンにするには、より強力なシグナル、つまり強い陣痛が必要になるということだ。そのため、この遺伝子変異を持つ女性では、痛みのシグナルが脳に届きにくいのだろう」と説明する。

研究グループは、今回の研究から得られた知見が、疼痛管理のための新薬の開発に役立つ可能性があると期待を寄せている。論文の上席著者で同大学麻酔科学のDavid Menon氏は、「予想を超える極度の痛みを経験した人について調べるこのような研究のアプローチは、他のさまざまな状況にも応用できる可能性がある。また、それによって痛みを感じる機序の解明が進み、痛みを抑えるための治療薬を開発できるかもしれない」と述べている。(HealthDay News 2020年7月22日)

▼外部リンク
Human Labor Pain Is Influenced by the Voltage-Gated Potassium Channel KV6.4 Subunit

HealthDay
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