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PD-L2の発現制御機構を解明、がんや免疫疾患の新たな治療法開発に期待-東京理科大

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2020年07月31日 PM12:00

免疫細胞表面のPD-1リガンド「」の発現制御機構は?

東京理科大学は7月27日、免疫細胞に特徴的に発現する細胞表面分子PD-L2の遺伝子発現制御機構を明らかにしたと発表した。この研究は、同大基礎工学部生物工学科の西山千春教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Immunology」に掲載されている。


画像はリリースより

PD-1は活性化した免疫T細胞の表面に発現する受容体であり、そのリガンドとしてPD-L1とPD-L2が同定されている。炎症性刺激や細胞の活性化に伴い、それらの分子の発現が上昇し免疫活性を抑える。そのため、PD-L1とPD-L2は過剰な免疫反応や炎症応答におけるチェックポイント分子として注目されている。がん細胞においてはPD-L1が恒常的に発現しているため、T細胞の増殖や機能が過剰に抑制されている。その結果、免疫システムはがん細胞を排除できなくなってしまう。そのため、PD-1やPD-L1、PD-L2をターゲットとした薬剤の研究が注目されており、実際にPD-1およびPD-L1をターゲットとした治療薬の抗がん作用は示され、一部はすでに臨床で用いられている。一方で、PD-L2が持つ生物学的な機能はまだよくわかっていないが、獲得免疫におけるさまざまな事象にPD-L2が関わることが明らかになりつつあり、がんなどの治療薬のターゲット分子として注目を集めている。

PD-L1はリンパ球系の細胞だけでなく、他のさまざまな細胞でも発現する一方で、PD-L2は樹状細胞やマクロファージなどの一部の血球系に特異的に発現するが、その発現制御機構はわかっていなかった。そこで研究グループは、転写因子であるPU.1は樹状細胞やマクロファージの発生と、樹状細胞の機能に重要な遺伝子発現制御に重要であることからPU.1に着目し、PD-L2をコードするPdcd1lg2遺伝子の発現制御機構について調べた。

IRF4とPU.1がPdcd1lg2遺伝子のCNS3領域のEICE配列依存的に転写活性化

PU.1は単体としても機能するが、加えて、結合パートナーである転写因子IRF4あるいはIRF8とヘテロダイマーを形成し、直接遺伝子のプロモーターに結合することにより、遺伝子発現を制御していることもわかっている。そこで研究グループは、骨髄由来樹状細胞(BMDC)において、、IRF4およびIRF8がPdcd1lg2遺伝子の発現制御に関わっているかを調べた。siRNAを用いてPU.1、IRF4およびIRF8の遺伝子発現を抑制したところ、IRF4やPU.1のノックダウンではPD-L2の発現量は抑えられたが、IRF8の場合は、発現抑制は認められなかった。逆に、IRF4を過剰に発現させると、PD-L2の発現量は通常よりも増加した。これらの実験結果から、PU.1とIRF4はPD-L2の発現制御に関わっていることがわかった。

IRF4とPU.1のヘテロダイマーは、EICE配列と呼ばれる特定のDNA配列パターンに結合して遺伝子発現を開始させることがわかっている。Pdcd1lg2遺伝子のDNA配列を確認したところ、プロモーターやイントロン部位に複数のEICE配列が存在していた。そこで、ChIPアッセイと定量的PCRを組み合わせて、IRF4とPU.1がそれらの領域に結合するかを検証。その結果、樹状細胞の染色体上では、Pdcd1lg2遺伝子の特定の領域(CNS3と命名)にPU.1とIRF4が有意に結合していることが確認された。また、DNAとタンパク質の相互作用を直接的に検証するため、ゲルシフトアッセイ(EMSA)を行った結果、IRF4とPU.1の複合体はCNS3中のEICE配列に強く結合した。

次に、このPdcd1lg2遺伝子CNS3のEICE配列がIRF4とPU.1によって転写活性化されるかをレポーターアッセイ法で検証。CNS3のEICE配列下流にルシフェラーゼ(発光タンパク質)の遺伝子を連結して培養細胞に導入し、IRF4とPU.1を共発現させたところ、発光タンパク質の強い発現が見られた。しかし、CNS3領域のEICE配列に変異を入れて配列を変えると、その発現は見られなかった。このことから、IRF4とPU.1はCNS3領域のEICE配列依存的に遺伝子を転写活性化できることがわかった。

PU.1はヒストンのエピジェネティック制御によりPdcd1lg2遺伝子の発現を促進

データベースの情報から、PD-L2を発現する細胞()では、他の血球系細胞と比べてCNS3を含む複数のCNS領域のH3ヒストンのリジン残基(K27)でアセチル化修飾が亢進していることがわかった。研究グループの過去の研究において、PU.1が樹状細胞においてCiita遺伝子(MHC class II発現を制御する共役因子)のアセチル化を調節することを突き止めている。さらに、PU.1はB細胞においてヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を有するp300と直接結合することもわかっている。そこで、CNS領域におけるヒストンのアセチル化にPU.1とp300が関わっているかを調べた。ChIPアッセイとsiRNAを組み合わせた実験を行ったところ、PU.1やp300をノックダウンした場合、ほとんどのCNS領域においてH3ヒストンのアセチル化量が減少した。これは、CNSでのアセチル化にPU.1とp300が関わっていることを示唆している。

顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)は、樹状細胞の分化を促したり、活性化を引き起こしたりする作用をもつ細胞外因子であるため、GM-CSF刺激が樹状細胞のPdcd1lg2遺伝子発現を上昇させ、そこにPU.1の動態変化が関わる可能性について検証。定量的PCRによるmRNA測定やフローサイトメトリー、ChIPアッセイを用いて解析した結果、ある種の樹状細胞ではGM-CSFによってPdcd1lg2遺伝子発現が著しく上昇し、この時、PD-L2遺伝子のCNS領域へ結合するPU.1量が増加すると共にCNS領域でのヒストンアセチル化が亢進することが判明した。

以上の結果から、PU.1は、IRF4とヘテロダイマーを形成し、Pdcd1lg2遺伝子のEICE配列に直接結合して転写活性化する機能と、p300の染色体へのリクルートを促してヒストンH3のアセチル化に寄与する機能との、2通りの役割によってPD-L2発現を誘導することが解明された。これらの検証の多くは主にBMDCを用いて行われたが、同様の関係性が成立することはマウスの脾臓の樹状細胞でも確認された。

PD-L2はがんだけでなく、アレルギーをはじめとしたさまざまな免疫関連疾患にも関わっていることがわかっており、PD-L2はそれらの疾患の治療薬のターゲット分子の有力候補になり得る。研究グループは、「今後、より詳細にPD-L2遺伝子発現制御機構が解明され、それら転写因子を制御することができれば、免疫の抑制機能を効率よく調節する新たな手法の開発につながると期待される」と、述べている。

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