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日本人の統合失調症、大規模ゲノム解析で発症に強く関連するバリアントを発見-名大

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2020年07月27日 PM12:00

ゲノムバリアントから統合失調症発症に至る病態は未解明

名古屋大学は7月22日、日本人を対象とした大規模な統合失調症ゲノム解析によって見出されたARHGAP10遺伝子上のバリアントが発症に強く関与する可能性について、ゲノム解析結果に基づくモデル動物およびゲノムバリアントを有する患者から樹立したiPS細胞から作製した神経細胞の解析を包括的に組み合わせることにより病態を明らかにしたと発表した。この研究は、同大脳とこころの研究センターの森大輔特任准教授、元医学部学部生の関口真理子氏、元医学系研究科医療薬学大学院生・現環境医学研究所の祖父江顕特任助教、医学部附属病院ゲノム医療センター・精神医学の久島周病院講師、元医学系研究科精神医学大学院生のWang Chenyao氏、医学部附属病院先端医療開発部・精神医学の有岡祐子特任講師、医学系研究科医療薬学の山田清文教授、精神医学・親と子どもの心療学の尾崎紀夫教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Translational Psychiatry」に掲載されている。


画像はリリースより

統合失調症の発症には遺伝要因の関与が考えられる。これまでに発症に関わるゲノムバリアントが同定されつつあるが、ゲノムバリアントから疾患発症に至る病態は未だ解明されておらず、治療薬開発を可能にする病態モデル動物・細胞の作製は長きにわたり課題だった。

RhoGAPファミリーに属するARHGAP10タンパク質は、低分子量Gタンパク質であるRhoAやCdc42を不活性化する機能を有するGTPase活性化タンパク質。脳や心筋などを含む生体内に広く分布し、エフェクターであるRhoキナーゼ等の活性制御を通して、アクチン細胞骨格制御などさまざまな生理機能の調節に重要な役割を果たしていることが知られているが、統合失調症発症との関連については全く知られていなかった。

ARHGAP10のCNVを同定、モデルマウスとiPS細胞で病態への関与を確認

今回、研究グループは、統合失調症患者約3,000人を対象とした大規模なゲノム解析によって、ARHGAP10遺伝子のコピー数バリアント(CNV)を、欠失6人、重複1人、計7人で同定。これらが統合失調症の発症に統計学的有意に関連することを示した。このうち1人は対立遺伝子上のRhoGAPドメイン上にアミノ酸置換(Ser490→Pro)を起こす一塩基バリアント(SNV)を有しており、その後の生化学的解析において基質となる活性型RhoAとの結合能が低下することがわかった。

次に研究グループは、ARHGAP10(Ser490→Pro)を模したモデルマウスをゲノム編集技術によって新規に作製。このマウススを解析した結果、(1)神経突起伸長が未熟、(2)スパイン密度の低下、(3)不安様行動の亢進、などの表現型異常が見出されたため、統合失調症モデル動物として確立した。さらにARHGAP10変異患者の同意を得てiPS細胞を樹立し、神経細胞に分化させたところ、モデルマウスと同様に、脳の発達過程において重要な神経突起伸長が未熟な傾向が再現された。

研究グループは今後の展開として、「今回の研究で開発したバイオリソースをもとに、Rhoシグナル伝達経路に焦点をあてた創薬開発を国内外の製薬企業と進めていきたいと考えている」と、述べている。

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