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話しづらいことが話しやすく?依存症治療にオンライン診療は有用か

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2020年07月20日 PM03:00

COVID-19パンデミックで米国の依存症治療が変化

新型コロナウイルス感染症()のパンデミックは、米国の薬物やアルコールなどの依存症(物質使用障害)の治療継続に大きな影響を与えている。ただしパンデミックの影響は、必ずしも悪いことばかりではないようだ。


画像提供HealthDay

COVID-19の感染拡大を背景に、米国では依存症患者に対する対面での診療や支援が休止、または非常に厳格な制限の下でのみ行われるようになった。さらに依存症回復支援施設の多くでは、COVID-19への不安から利用者が減少したため、経営難に陥っている。ただ、このような変化の一方で、COVID-19の流行によって米国のヘルスケア全体が遠隔医療へシフトしており、依存症治療へのアクセスも向上した可能性があるという。

依存症回復支援活動を行っている非営利団体「Partnership to End Addiction」のFred Muench氏は、依存症治療を提供している医療プロバイダーが財政難を乗り越えるには、遠隔医療の導入が鍵になると指摘する。「現在先行している、遠隔医療に特化した医療プロバイダーによる治療だけでなく、将来的には全ての治療・サービスに遠隔医療の要素が組み込まれるようになるだろう。それに対応できないプロバイダーはやがて消滅することになる」と、Muench氏はみている。

アルコール依存症患者の自助グループ団体もまた、COVID-19によるロックダウンによって、オンライン集会やテレカンファレンスを通じた活動への転換を迫られることになった。その他、ロックダウン中には多くの回復支援施設が、それまで提供していたサービスの中止を余儀なくされた。回復支援施設の加盟組織(National Council for Behavioral Health)が傘下の約3,400施設を対象に4月に行った調査からは、9割の施設がスタッフを解雇したり提供プログラムを縮小しており、3分の2の施設は今後3カ月以内に事業継続の運転資金が底をつくと回答したことが分かった。

このような厳しい状況の中で依存症治療プロバイダーは、他の多くの医療サービスと同様、電話やインターネットを介した依存症の遠隔医療に乗り出した。ロックダウン中の遠隔医療について保険償還の規制を連邦政府が緩和したため、遠隔医療を通じて確実に収入を得られるようになったことも、この動きを後押ししている。実際、依存症を専門とする米ミシガン大学のLewei Lin氏は「遠隔医療へのシフトが進んだことで治療を受ける患者数が増加したという話が、多方面から聞こえてくる」と話している。

ただし、これまで対面サービスを受けていた患者の中には「遠隔医療という治療環境の変化で混乱し、治療を進めにくい状況に陥る人もいるだろう」とMuench氏は指摘する。しかしLin氏は、「それでも遠隔医療には、いくつかの利点がある」と言う。例えば、「依存症治療では頻繁に外来受診する必要があったが、遠隔医療の導入によって患者が治療スケジュールを守りやすくなった」と説明している。

またMuench氏は、リモートでの治療は偏見にさらされることへの恐れや不安の軽減につながり、治療への意欲が高まる可能性があるとの見方を示す。さらに同氏によれば、対面よりもオンラインの方が、薬物の使用や性行動、精神症状といった話しづらいことでも話しやすくなると感じる患者が多いという。

こうした変化を背景に、Lin氏をはじめとする専門家たちは「JAMA Psychiatry」7月1日オンライン版にある論説を発表した。それには、対面医療と遠隔医療双方のメリットを生かすためのガイドラインの策定、遠隔医療での依存症治療薬の安全で確実な供給体制の確立など、早急に推進すべきポイントが掲げられている。そして、COVID-19のパンデミックが収束した後も、引き続き依存症治療の重要なアプローチの一つとして、遠隔医療を活用すべきだとしている。

ただ、これまでの研究からさまざまな領域で遠隔医療の有用性が確認されているが、依存症治療への導入についての研究は数が少ないことも確かであり、Lin氏は「今後の研究で依存症治療における遠隔医療の有用性を検証する必要がある」と強調している。(HealthDay News 2020年7月8日)

▼外部リンク
Telehealth for Substance-Using Populations in the Age of Coronavirus Disease 2019

HealthDay
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