医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 急速進行性糸球体腎炎の診断と腎予後予測が可能な「尿検査法」を開発-藤田医科大ほか

急速進行性糸球体腎炎の診断と腎予後予測が可能な「尿検査法」を開発-藤田医科大ほか

読了時間:約 3分27秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年07月10日 PM12:00

ANCA関連腎炎を含む糸球体腎炎の活動期で尿中に漏れるCD11bとCD163に着目

藤田医科大学は7月8日、好中球細胞質抗体(ANCA)関連腎炎で、炎症を司る白血球の表面分子が尿中で増加し、治療後の腎予後と関係することを、国内多施設のANCA関連腎炎患者検体を用いて証明したと発表した。この研究は、同大腎臓内科学の横江優貴助教(名古屋大学医学系研究科元大学院生)、坪井直毅教授と名古屋大学医学系研究科腎臓内科学の丸山彰一教授らの研究チームによるもの。研究成果は、「Nephrology Dialysis Transplantation」の電子版に掲載されている。


画像はリリースより

ANCA関連血管炎()は他臓器に炎症を引き起こす指定難病だが、腎臓に障害が起きた場合はANCA関連腎炎と呼ばれ、臨床経過上急速な腎機能低下を示すこと(急速進行性糸球体腎炎)、病理組織上では腎糸球体毛細血管の破綻により半月体と呼ばれる炎症所見(半月体形成性糸球体腎炎)を呈することが特徴だ。そのため、診断、疾患の活動性評価、治療選択、予後推定の上で、腎生検による組織診断が必要となる。しかし、組織採取という侵襲性のため、同検査には入院を要する。また、多くが高齢者に発症し、かつ血管の炎症を生じるANCA関連腎炎患者では、検査後の出血リスクが高まる。これらのことから、外来通院での状態把握、全身状態の悪い患者や合併症で腎生検が施行できない場合には、腎生検の代替となる検査法が望まれていた。

ANCA関連腎炎の炎症は、腎臓のろ過装置である糸球体に白血球が集まり生じる。中でも、好中球、マクロファージといった細胞は、急性炎症を担う白血球として知られている。好中球、マクロファージはその細胞表面に、CD11bという白血球と血管との接着に関わる分子を、さらにマクロファージはCD163という異物除去に関わる分子を有する。研究グループは、これまでに糸球体疾患の中で、ANCA関連腎炎を含む糸球体腎炎の活動期にはCD11bやCD163が尿中に漏れることを明らかにしてきたが、臨床指標としての意義は判明していなかった。

そこで今回、診断時の尿中CD11bとCD163値が、糸球体での白血球集積、治療反応性、腎予後を予測するのではないかとの仮説を立て、名古屋大学とその関連病院、厚生労働省難治性疾患克服研究事業で集められた多施設のANCA関連腎炎患者検体を用いて解析した。

、CD163の測定で急速進行性糸球体腎炎の診断が可能、CD11bで腎機能改善を予見できることも判明

まず、名古屋大学医学部附属病院とその関連病院(88例)、および厚生労働省難治性疾患克服研究事業(138例)で組織診断時に収集された合計226例のANCA関連腎炎患者尿検体でCD11bとCD163値を測定し、糸球体の組織学的分類、尿タンパク、腎機能との関連性を検討した。その結果、CD11b、CD163の両分子は、全糸球体のうち半月体形成糸球体が50%以上を占め、かつ廃絶した糸球体が50%以下である半月体型と呼ばれるカテゴリーに分類される患者群で有意に増加していた。また両分子はともに、尿タンパクとは正の、腎機能とは負の相関を示したが、それらはCD163でより強固だった。

次に、CD11b陽性、CD163陽性の各白血球分画の糸球体での分布に注目したところ、CD163陽性白血球数は糸球体全領域に均等に観察されたのに対し、CD11b陽性白血球数は半月体内よりも糸球体の未破壊領域に多く分布していた。また尿中の両分子の値は、半月体形成率や、半月体内のCD11b陽性、CD163陽性白血球分画集積数とも、それぞれ有意に相関していた。

治療後の腎予後に関する検討では、尿中CD163値は、治療6か月後に有意に減少したが、未寛解あるいは腎機能障害が重度となった患者群では、診断時にすでに上昇していることが明らかとなった。これらの結果は尿中CD11b値ではみられなかったが、診断時における両分子尿中漏出量と2年後までの腎機能低下率との関連を、他の臨床的パラメーターを加えて検討したところ、年齢、腎機能低下、尿タンパク量が最長2年間の腎機能悪化の予期因子であるのに対し、尿中CD11b値は腎機能改善を予見する独立した因子であることが明らかになった。一方、尿中CD163は腎予後を推定する因子とはならなかった。

特に、、状態の悪化した患者、出血のリスクが高い患者などに対して有効な診断法となる可能性

今回の研究成果から、尿中CD11b、CD163の両者は診断時に測定することにより、ANCA関連腎炎の糸球体炎症、特に白血球の集積を反映する診断法として有用性が示唆された。また、尿中CD11bの値から治療後の腎機能改善の予測が立ち、治療薬や強度決定の際の補助情報として有用だ。ANCA関連腎炎は短期間に重篤な経過をとることの多い疾患であるため、短時間で済み、非侵襲的な尿検査から組織所見を推測できる同検査法は、組織検査が躊躇される高齢者や状態の悪化した患者、出血のリスクが高い患者、あるいは組織診断体制が整っていない発展途上国においても大きな臨床的意義を持つ。

同研究は、日本国内患者の生体試料を用いた検討だが、日本と欧米ではAAVの表現型に大きな差が見られる。異なった人種間における同診断法の整合性を評価するため、研究グループは、欧米の研究施設との国際共同研究を計画しているという。さらには診療現場での応用を視野に入れ、検査試薬開発を企業に働きかけていくとしている。「非侵襲的な検査法による正確な診断のもと、適切な免疫抑制治療を選択することでANCA-GN患者の予後改善に貢献することを目標としている」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 潰瘍性大腸炎、炎症部位でIL-26産生CD8T細胞が著しく増加-順大ほか
  • 日本人の「家族性膵臓がん」関連遺伝子を明らかに-阪大ほか
  • 高齢者の難聴、心臓血管疾患や「教育歴の短さ」によってリスク増加-富山大ほか
  • C型肝炎ウイルスが2つの異なる繁栄戦略を使い分けて生存していると判明-九大ほか
  • 精神疾患の発症に、脳発達過程の興奮性神経細胞と抑制性神経細胞の不均衡が関連-理研ほか