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良質な母乳は子の慢性疾患や肥満を予防する可能性、母親にできることは?

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2020年07月09日 PM03:15

母親の運動で母乳中の有益な成分が増加か

健康的なライフスタイルに運動は欠かせないが、運動には母乳中の3′−シアリルラクトース(3SL)と呼ばれる有益な成分を増加させる効果もあることが、マウスとヒトを対象に実施された研究で示唆された。シアリルラクトースは母乳オリゴ糖の一種で、感染防御効果があることが示唆されている。研究グループは「3SLが豊富な母乳を飲んで育った子どもは、成長後も肥満や2型糖尿病、心疾患といった慢性疾患に罹患しにくい状態を維持できる可能性がある」としている。研究結果は「Nature Metabolism」6月29日オンライン版に発表された。


画像提供HealthDay

この研究で、マウスを対象にした研究パートを率いた米オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターのKristin Stanford氏は、「われわれが過去に実施した研究から、妊娠中や授乳期に母親が運動することにより子どもの健康が増進することは明らかになっている。それには、母乳が大きな役割を果たしているとするエビデンスもある。われわれの今回の研究は、母乳中の何が子どもの健康に良い影響を与えているのかを明らかにしようとしたものだ」と研究背景について説明している。

マウスを用いた実験では、運動をしていた母親マウスから生まれ、運動をしていた別の母親マウスのミルクで育てられた子どもは、脂肪量や体重が少なく、糖代謝が優れていることが明らかになった。また、運動をしていなかった母親から生まれた子どもに、運動をしていた別の母親のミルクを与えて育てた場合でも、同様の効果が認められた。これは、母乳を介して子どもに健康へのベネフィットがもたらされたことを意味する。その後、これらの子どもに高脂肪食を与えたが、代謝や心機能、体組成は引き続き優れた状態に保たれた。

一方、139人のヒトの母親を対象とした研究パートを率いたのは、米アーカンソー小児栄養センターのAline Andres氏である。対象の母親には、妊娠中に歩数を測定するため活動量計を使用してもらうとともに、出産後に母乳を検体として提供してもらい、解析を行った。その結果、BMIや運動強度にかかわりなく、歩数が多いほど母乳中の3SLの量が増えることが分かった。

ヒトを対象とした研究でもマウスの実験と同様の結果が得られたことに、Stanford氏は「胸が躍った」と振り返る。そして、「妊娠中に歩数を増やすというシンプルな心掛けによって、代謝障害などの問題が子どもに生じるのを防ぎ、子どもの発達にわずかでも良い影響を与えるのであれば、公衆衛生の観点から極めて大きな意義があると考えられる」と述べている。ただし、今回の研究では運動によって実際に母乳中の3SL量が増加することを証明するには至っていない。

米セントルイスを拠点に栄養コンサルタントとして活躍するConnie Diekman氏は、今回の報告を受けて「これまで長年にわたって母乳は子どもの健康にとって最善であると提唱されてきたが、その妥当性を示した研究結果だといえる」と述べ、「母乳を与えられる期間が、たとえ6週間、あるいは2カ月間であったとしても、子どもは生涯にわたって大きな恩恵を受けることができる」と説明している。ただし、何らかの理由で母乳育児ができない、あるいは母乳育児を選ばなかった場合には、「子どものためにバランスの取れた健康的な食事計画を立てると良い」と助言している。(HealthDay News 2020年6月30日)

▼外部リンク
Exercise-induced 3′-sialyllactose in breast milk is a critical mediator to improve metabolic health and cardiac function in mouse offspring

HealthDay
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