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全身麻酔に使用されるハロゲン化揮発性麻酔薬は、温室効果ガスとして100年以上残存?

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2020年06月29日 PM02:45

局所麻酔の選択は地球温暖化対策となるのか

麻酔科医の選択が温暖化から地球を救うことにつながるかもしれない。米Hospital for Special Surgery(HSS)の麻酔科医であるChristopher Wu氏らが、全身麻酔の代わりに局所麻酔を選択することで、気候変動の要因の一つとなっている温室効果ガスの排出量が削減される可能性があるとする研究結果を、「Regional Anesthesia & Pain Medicine」6月16日オンライン版に発表した。


画像提供HealthDay

局所麻酔では、全身麻酔で使われているデスフルランや亜酸化窒素といったハロゲン化揮発性麻酔薬は使われない。研究グループによると、こうした麻酔薬は、温室効果ガスとして大気中に最長で114年間も残存し続けるという。一方、局所麻酔では、鎮静薬の静脈投与とともに局所神経ブロックが施行される。

HSSは2019年、股関節および膝関節の置換術に際しては、可能な限り局所麻酔を選ぶことを決定。これを受けて、同年のHSSでの股関節および膝関節置換術の施行件数は1万485件だったが、このうち全身麻酔下で施行された置換術の割合はわずか4%(419件)だったという。これにより得られた温室効果ガスの削減効果を試算したところ、石炭2万7,000ポンド(約12.2トン)、ガソリン2,750ガロン(約1万410リットル)の消費、あるいは自動車で6万500マイル(約9万7,365キロメートル)の走行、スマートフォン311万台分の充電に伴う温室効果ガス排出量の削減に相当するという結果が得られた。

一方、米国では2009年に、平均2時間に及ぶ股関節や膝関節の置換術が100万件以上施行された。これらの手術が全て全身麻酔下で施行されていたと仮定すると、大気中に排出されたデスフルランの量は112トン、亜酸化窒素の量は9トンと推計された。これは、石炭326万ポンド(約1,480トン)、ガソリン33万3,000ガロン(約126万リットル)の消費、あるいは自動車で735万マイル(約1182万8,678キロメートル)の走行、スマートフォン3億7800万台分の充電に伴う温室効果ガスの排出量に相当すると推計された。

これらの結果を受けてWu氏らは「局所麻酔を増やすことは、少なくとも股関節や膝関節の置換術においては、治療の質の向上に寄与するだけでなく、気候にも良い影響を与える可能性がある。また、医師が地球温暖化を食い止めるための個人的責任を果たすことにもつながる」と説明している。

ただし、研究グループは「今回の解析は、もちろん完璧なものではない。揮発性麻酔薬と比べた局所麻酔薬の製造や、局所麻酔薬の製品キットに使用されているプラスチックが環境に与える影響などを考慮していないからだ」と研究の限界について述べている。また、全ての手術を局所麻酔下での施行に切り替えるのは難しいことも認めている。

その一方で、研究グループは「地球上の温室効果ガスに麻酔ガスが占める割合に関する確定的なデータはないが、これまでの研究では、米国の汚染物質排出量の5~10%は医療システムに由来すると推定されている」と指摘し、手術室における二酸化炭素排出量の約50~60%が麻酔ガス由来であることにも言及している。(HealthDay News 2020年6月17日))

▼外部リンク
‘Green-gional’ anesthesia: the non-polluting benefits of regional anesthesia to decrease greenhouse gases and attenuate climate change

HealthDay
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