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アルポート症候群、核酸医薬によるエクソンスキッピング療法を開発-神戸大ほか

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2020年06月05日 PM12:30

XLAS男性患者は重症型変異を軽症型変異に置換で軽症化が可能

神戸大学は6月2日、アルポート症候群に対し、核酸医薬を用いた特異的治療法としてエクソンスキッピング療法の開発を行い、同療法が疾患モデル動物において著効することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科内科系講座小児科学分野の野津寛大特命教授、山村智彦助教、松尾雅文前教授、飯島一誠教授ら、同医療情報部の髙岡裕准教授、および、熊本大学の甲斐広文教授ら、理化学研究所の髙里実チームリーダーらのグループが、第一三共株式会社との共同研究として行ったもの。研究成果は、「Nature Communications」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

アルポート症候群は常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)に次いで2番目に発症頻度の高い遺伝性腎疾患で、海外からは発症頻度は5,000人から1万人に1人と報告されている。しばしば腎不全へと進行する腎症、難聴、眼合併症を特徴とし、遺伝形式はX染色体連鎖型、常染色体優性、常染色体劣性の3つがあるが、約80%がX染色体連鎖型だ。

X染色体連鎖型アルポート症候群(XLAS)は、男性患者で特に重症化しやすい。男性患者の約90%が40歳までに末期腎不全へと進行するが、疾患特異的治療法はこれまでに存在しない。腎臓の糸球体基底膜を構成する最も重要なタンパク質である4型コラーゲンα5鎖(α5(IV))をコードする遺伝子COL4A5遺伝子の異常により発症するため、男性患者においては腎臓にα5(IV)タンパク質の発現を一切認めない。XLAS男性患者がCOL4A5遺伝子にナンセンス変異等の重症型の変異を有する場合、ミスセンス変異などの軽症型の変異を有する場合に比較し、15年以上腎不全進行が早いことが知られている。つまり、この疾患においては、重症型変異を軽症型変異に置換することができれば軽症化が可能と考えられた。

ASOを用いたエクソンスキッピングでin frame変異に置換

今回、研究グループは、核酸医薬(アンチセンス核酸;ASO)を用いて重症型変異を軽症型変異に置換する、エクソンスキッピング療法の開発に着手。ASOを用いた治療は近年注目されており、脊髄性筋萎縮症およびデュシェンヌ型筋ジストロフィーなどの難治性の遺伝性疾患に対してすでに臨床応用されている。

XLASは、COL4A5にナンセンス変異等の重症型の遺伝子変異を認める場合は20歳代前半までに末期腎不全へと進行する。一方、3の倍数の塩基数の欠失(in-frame変異)を認める場合は軽症型となり、およそ10年間末期腎不全進行年齢が遅延することを野津特命教授らは過去に報告している。そのため、ASOを用いたエクソンスキッピング療法により、重症型変異をin-frameの軽症型変異へと置換することで軽症化を試みた。

ASOによるエクソンスキッピング療法の具体的な作用機序としては、まず、ASOがpre-mRNAのExonic splicing enhancer(ESE)領域に結合し、エクソンに対するSRタンパク質の結合がブロックされる。SRタンパク質の結合はエクソンとして認識されるための重要なステップであり、それがブロックされることでエクソンのスキッピングが誘導される。これにより、ナンセンス変異を有さないmRNAが産生されるという流れだ。

疾患モデルマウスで腎機能悪化を抑制し、生存期間も著明に延長

実際、COL4A5のナンセンス変異を有するマウスモデルに同治療法を行ったところ、腎臓において、α5(IV)タンパク質の発現を確認。また、ASO治療群では尿タンパクの漏出を生理食塩水投与群に比較して有意に抑制し、腎機能障害の進行(血清クレアチニン値の上昇)も抑制した。さらに生存期間を著明に延長させることに成功。これらの結果に加え、腎病理組織学的にも腎障害の進行も著明に抑制された。

今回の結果により、エクソンスキッピング療法は重症の遺伝子変異を有するアルポート症候群モデルマウスに対して著効することが証明された。研究グループは現在、モデル動物において薬剤の投与量の決定および安全性を評価する試験を進行中であり、これらの評価が終了後、患者に対する治験を行う予定だとしている。(QLifePro編集部)

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