医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 家族性ADに対するブロモクリプチンのP1/2医師主導治験開始-CiRAほか

家族性ADに対するブロモクリプチンのP1/2医師主導治験開始-CiRAほか

読了時間:約 2分9秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年06月05日 PM12:15

患者由来iPS細胞を用いた過去研究で、ブロモクリプチンはアミロイドβを低減

京都大学iPS細胞研究所()は6月4日、プレセニリン1遺伝子変異陽性の家族性アルツハイマー病に対するTW-012R(ブロモクリプチン)の安全性と有効性を検討する二重盲検比較試験および非盲検継続投与試験を開始すると発表した。これは、同研究所の井上治久教授(京都大学医学部附属病院流動プロジェクトプロジェクトリーダー併任)、三重大学医学部附属病院の冨本秀和教授、京都大学医学部附属病院の坂野晴彦准教授らによる多施設共同試験。2020年4月1日にPMDAに治験計画届を提出し、同6月5日から治験を開始する。臨床試験の詳細は、臨床研究実施計画・研究概要公開システム(jRCT)に掲載されている。

アルツハイマー病には、常染色体優性遺伝の若年発症の家族性と、95%以上を占める孤発性とがある。家族性アルツハイマー病の半数以上では、「プレセニリン1」遺伝子変異があり、プレセニリン2変異およびアミロイドβタンパク質前駆体(APP)変異とともに、家族性アルツハイマー病の原因とされている。認知症を主症状として、平均発症年齢は40歳代、比較的病気の進行が速い傾向がある。

CiRAの近藤孝之特定拠点講師、井上治久教授らは、アルツハイマー病患者由来のiPS細胞を大脳皮質神経細胞へ分化させ、その細胞を用いて、すでに他の疾患に用いられている既存薬の中から病因となるアミロイドβを減らす化合物のスクリーニングを実施。その結果、最も強力な候補物質として「ブロモクリプチン」を同定し報告している。ブロモクリプチンは、パーキンソン症候群などの治療薬として用いられている既存薬で、アルツハイマー病病因物質であるアミロイドβを低減させる働きが、特にプレセニリン1遺伝子変異を持つ家族性アルツハイマー病患者のiPS細胞モデルで認められている。今回の臨床試験は、アルツハイマー病患者における安全性および有効性を明らかにするため実施される。

国内7施設で実施、約50週間にわたってブロモクリプチンを経口投与

臨床試験は、、京都大学医学部附属病院、、川崎医科大学附属病院の7機関で実施予定。同試験の主な適格基準は次の通り。
・プレセニリン1遺伝子に変異をもつアルツハイマー病患者
・信頼できる親密な関係のパートナー/介護者のいるもの
・患者本人または代諾者から文書による同意が得られているもの 等

また、プレセニリン1変異を持つ家族性アルツハイマー病と診断がすでについていない患者は対象外。その他除外基準は以下の通り。
・錠剤の経口摂取が困難なもの
・アルツハイマー病以外の病態による認知症が認められるもの
・心臓超音波検査により、心臓弁尖肥厚、心臓弁可動制限およびこれらに伴う狭窄等の心臓弁膜の病変の既往/合併のあるもの
・妊婦、授乳婦、妊娠している可能性がある女性(妊娠検査を実施し、妊娠の有無を確認する)、妊娠を希望している女性
・同意取得前5年以内に悪性腫瘍の既往のあるもの 等

上記に該当する家族性アルツハイマー病患者に、約50週間にわたり治験薬を投与する。治験薬は、東和薬品株式会社より提供を受ける。目標症例数は10例、観察期間は1年程度(参加者の通院の期間として)を予定。安全性の評価が主目的で、限定された症例数に対して実施するため、治験募集は行われない。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 平均身長の男女差、軟骨の成長遺伝子発現量の違いが関連-成育医療センターほか
  • 授乳婦のリバーロキサバン内服は、安全性が高いと判明-京大
  • 薬疹の発生、HLAを介したケラチノサイトでの小胞体ストレスが原因と判明-千葉大
  • 「心血管疾患」患者のいる家族は、うつ病リスクが増加する可能性-京大ほか
  • 早期大腸がん、発がん予測につながる免疫寛容の仕組みを同定-九大ほか