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簡単な操作のみで抗体検査を20分以内に完了できる検査装置を開発-北大ほか

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2020年05月21日 PM12:00

既存の検査法では「簡便・迅速・大量」に測定することが不可能

北海道大学は5月20日、抗体検査のようなバイオ検査を現場で迅速に実施できる検査装置を開発し、その応用例として鳥インフルエンザウイルス抗体を20分以内に検出できることを実証したと発表した。これは、同大大学院総合化学院博士後期課程・日本学術振興会の西山慶音特別研究員、同工学研究院の渡慶次学教授、帯広畜産大学畜産学部の小川晴子教授、東北大学多元物質科学研究所の火原彰秀教授、Tianma Japan株式会社らの研究グループによるもの。研究成果は、「Sensors and Actuators B: Chemical」誌に掲載されている。


画像はリリースより

鳥インフルエンザは、A型インフルエンザウイルスによる感染症であり、通常は鳥類に対して感染性を示す。特に、H5亜型鳥インフルエンザウイルス(H5-AIV)の中には、非常に高い病原性を示す株が存在し、それらによる疾患は高病原性鳥インフルエンザとして家畜伝染病(法定伝染病)に指定されている。過去には家禽からヒトへの感染も報告されており、H5N1亜型がヒトへ感染した場合の死亡率は50%を超える。これらの高病原性ウイルスの被害を最小限に食い止めるため、鳥インフルエンザ発生時に迅速な亜型判定が求められている。

しかし、現在主流のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による亜型判定は、正確だが解析に長時間かかることと、その場での測定できないことが問題だった。また、簡易診断でしばしば用いられるイムノクロマト法は、測定の正確さに欠け、定量的な評価ができないという欠点が存在するため、現場で簡便・迅速・大量に測定できる検査技術が強く求められていた。

ポータブル蛍光偏光装置で偏光度を測定し、抗体を検出

研究グループは、抗H5-AIV抗体を蛍光偏光免疫分析法(FPIA)で検出することで、H5-AIVの感染履歴を判定する技術を開発した。測定装置については、通過する光の偏光方向を制御する性質をもつ液晶とイメージセンサーを組み合わせることで、蛍光偏光イメージングシステムを構築した。また、現場での迅速な検査を実現するため、持ち運び可能なサイズになるよう新たな測定機構を設計したことで、重さ5.5kgのポータブル蛍光偏光測定装置を実現した。また、マイクロ流体デバイス内に作製した何本もの微細な流路を測定容器として用いることで、少量サンプルで多検体を同時測定することが可能となった。

さらに、同検出装置とともに、測定に使用する試薬の開発も行った。まず、H5-AIV表面に発現しているヘマグルチニンタンパク質の断片を遺伝子組換えにより作製し、そのタンパク質断片に蛍光分子を結合(標識)させた。この蛍光標識タンパク質(測定試薬)は、抗H5-AIV抗体とだけ結合する。実際の測定では、鳥から採取した血清と測定試薬を混合し15分放置した後、混合液をマイクロ流体デバイスに導入し、ポータブル蛍光偏光装置にセットして偏光度を測定する。抗体と結合した測定試薬は、結合していないものと比較して溶液中での分子運動が小さくなる。

分子運動の差異は偏光度の差異となって表れるため、ポータブル蛍光偏光装置で偏光度を測定することで、抗体を検出できる。同手法により、わずか2μLの血清量で、20分以内に抗H5-AIV抗体を検出できるようになった。また、抗H5亜型AIV血清は、他亜型AIVの抗血清よりも有意に大きな偏光度を示した。

新型コロナをはじめとする、さまざまな抗体・病原体への応用拡大に期待

今回の測定試薬開発により、さまざまなターゲットへの展開が期待される。研究グループはすでに、同手法を用いたカビ毒や薬剤の検出に成功しており、今後は他の抗体やウイルス検出への応用を検討している。

研究グループは、「(SARS-CoV-2)を例にとると、ウイルス表面のスパイクタンパク質の断片を遺伝子組換えで作製することで、抗SARS-CoV-2抗体の検出へ応用できると期待される」と、述べている。

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