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東アジア人集団の2型糖尿病、新規関連遺伝子領域を発見-東大病院ほか

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2020年05月15日 PM01:30

40万人規模のゲノムワイド関連解析で、糖尿病発症リスクを高める遺伝子領域61か所同定

東京大学医学部附属病院は5月12日、東アジアなどの国々の研究機関との研究を共催し(the Asian Genetic Epidemiology Network(AGEN)consortium)、40万人規模の東アジア人集団の遺伝情報を用いたゲノムワイド関連解析(GWAS)の大規模メタ解析を行い、2型糖尿病発症のリスクを高める遺伝子領域を新たに61か所同定したと発表した。これは、同大大学院医学系研究科の門脇孝特任教授(研究当時)、山内敏正教授、 生命医科学研究センターの堀越桃子チームリーダーらの研究グループが、東アジアなどの研究機関と共同で行ったもの。研究成果は、「Nature」のオンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

2型糖尿病は、慢性的な高血糖により、さまざまな疾患の危険性を高める重大な疾患であり、日本国内で約1,000万人、世界中で4億人以上が患っていると推測されている。2型糖尿病は民族集団により遺伝要因や病態生理に異なる部分がある可能性が示唆されており、日本人集団を含む東アジア人集団は、欧米人集団に比べ肥満がなくても2型糖尿病を発症しやすいなどの特徴が知られている。

東京大学大学院医学系研究科や理化学研究所生命医科学研究センターを含む日本の研究グループはこれまで、日本人集団における2型糖尿病の遺伝的な要因を明らかにするために、大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施し2型糖尿病に関わる遺伝子領域を数多く同定してきた。

女性の心血管疾患との関係が示されているCPS1領域は、2型糖尿病と有意に関連

今回研究グループは、日本におけるこれまでの取り組みをさらに発展させ、東アジア地域における国際的な研究を共同で実施。東アジア人集団の2型糖尿病の遺伝素因を解明するために、東アジア人集団における23の2型糖尿病のGWASの結果を統合し、メタ解析を行った(7万7,418例、対照群35万6,122例。このうち、2型糖尿病3万6,614例、対照群15万5,150例)。さらに、肥満度による補正を加えた解析や、男性、女性のみを対象とした層別解析も行った。

これらの解析により、183の遺伝子領域が2型糖尿病と関連しており、うち61領域はこれまでに報告のない新規領域であることがわかった。同一の遺伝子領域に存在する複数の独立した関連シグナルを同定するために条件付き分析を実施したところ、さらに118のシグナルを同定し、シグナルの総数は301にのぼった。既報のANK1/NKX6-3領域では、今回3つの独立した関連シグナルが見つかった。このうち、シグナル1(rs33981001)は膵臓のランゲルハンス島におけるNKX6-3の遺伝子発現を調節するバリアントと隣接していた。膵臓のランゲルハンス島は血糖値を下げるホルモンであるインスリンを分泌する組織であり、NKX6-3はランゲルハンス島を構成する血糖調節に関わるα細胞やβ細胞の発生に関わる遺伝子だ。rs33981001の2型糖尿病発症のリスクを上げるアリルはNKX6-3の遺伝子発現低下と関連していた。一方で、シグナル2(rs62508166)は皮下脂肪組織や骨格筋におけるANK1の遺伝子発現を調節するバリアントと隣接していた。ANK1は骨格筋における糖の取り込みに影響を与えることが知られており、インスリン感受性に関わることが示唆されている。これらの結果から、同一の遺伝子領域にある異なる2つのシグナルが、異なる組織における異なる遺伝子の発現を調節することで、2型糖尿病を発症する危険性に影響を与えることが示唆された。

次に、各性別に特徴的な2型糖尿病関連領域を探索するため、男性のみ(2型糖尿病2万8,027例、対照群8万9,312例)、女性のみ(2型糖尿病2万7,370例、対照群13万5,055例)を対象とした層別解析を実施。その結果、各性別に特徴的な6つの領域を新たに同定した。特に、これまでに心血管疾患や血液中の低分子代謝物との関連が男性に比べて女性で強いことが報告されていたCPS1領域(rs1047891)は、同研究において女性を対象とする肥満度による補正を含めた層別解析により、2型糖尿病と有意な関連を示した。

ALDH2領域は、男性のみで2型糖尿病との強い関連示す

今回同定された2型糖尿病関連領域のうち、2型糖尿病発症リスクに与える効果が男女間で最も大きく異なる領域はALDH2領域(rs12231737)だった。ALDH2領域は男性では2型糖尿病発症リスクと強い関連を示したが、女性では全く関連がなかった。ALDH2領域は東アジア人集団における適応進化の対象であることが報告されている。また、ALDH2はアルコール代謝に関連する酵素の遺伝子であり、二日酔いの原因物質とされるアセトアルデヒドを酢酸に変換する経路に寄与することが知られている。2型糖尿病発症のリスクを上げるアリルはアルコールへの耐性(強さ)、肥満度・血圧・血中中性脂肪の上昇と関連する一方で、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)や心血管疾患の危険性の低下と関連していた。

別の2型糖尿病関連領域には、膵臓のβ細胞で機能する一群のマイクロRNAをコードする領域が含まれていた。これらのマイクロRNAは膵臓のβ細胞に特異的に発現しており、その標的遺伝子はβ細胞のアポトーシスを促進することが知られている。また、インスリン分泌や膵β細胞の増殖を制御するMIR17HGというマイクロRNAをコードする遺伝子領域も2型糖尿病関連領域に含まれていた。さらに、MIR17HGの標的遺伝子であり、肝臓における糖分(グルコース)の生成に関わるTRAF3遺伝子近傍にも2型糖尿病関連領域が存在した。これらの知見から、マイクロRNAが2型糖尿病の発症リスクに影響を与えることが示唆された。

今回の研究で得られた結果は、東アジア人集団における2型糖尿病の遺伝要因の理解を深めるとともに、将来的には2型糖尿病の病態解明や治療薬開発に応用されることが期待される。(QLifePro編集部)

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