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サトラリズマブ、視神経脊髄炎スペクトラム対象P3試験の結果がLancet Neurologyに掲載-中外

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2020年04月28日 PM12:00

サトラリズマブ単剤療法、プラセボに対して再発リスクを55%減少

中外製薬株式会社は4月24日、視神経脊髄炎スペクトラム障害(Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder:NMOSD)を対象に開発中のヒト化抗IL-6レセプターリサイクリング抗体サトラリズマブ(開発コード:SA237)について、第3相国際共同治験SAkuraStar試験の成績が4月22日(現地時間)に「Lancet Neurology」に掲載されたと発表した。

SAkuraStar試験(NCT02073279)は、抗アクアポリン4(aquaporin-4:AQP4)抗体陽性/陰性いずれも含む、実臨床における幅広いNMOSD患者に相当する全体集団を対象に、サトラリズマブを投与した際の有効性および安全性を評価した多施設共同第3相ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験。主要評価項目は、二重盲検期間における治験実施計画書に規定された初回再発(独立委員会により判定)までの期間。

同試験の結果、サトラリズマブ単剤療法はプラセボに対して再発リスクを55%減少させ、統計学的な有意差をもって主要評価項目を達成した(ハザード比:0.45[95%信頼区間:0.23~0.89]、p=0.018[層別log-rank検定])。また、サトラリズマブ単剤療法を受けた患者における無再発は、治療開始48週の時点で76.1%、96週の時点で72.1%、144週の時点で62.8%だった。プラセボ投与を受けた患者では、48週の時点で61.9%、96週の時点で51.2%、144週の時点で34.1%が無再発だった。

再発までの期間に対する事前に規定されたサブグループ解析の結果、抗AQP4抗体陽性患者におけるサトラリズマブ群のプラセボ群に対するハザード比は0.26(N=64、95%信頼区間:0.11~0.63)。重篤な有害事象の発現率は、サトラリズマブ群とプラセボ群で同様だった。サトラリズマブ群の主な有害事象は尿路感染および上気道感染だったとしている。

視神経と脊髄の炎症性病変が特徴の自己免疫疾患「NMOSD」

NMOSDは、視神経と脊髄の炎症性病変を特徴とする中枢神経系の自己免疫疾患。永続的な神経障害により、生涯にわたって著しい生活の質の低下が生じる。NMOSD患者は、症状を繰り返す再発経過をたどることが多く、神経の損傷や障害が蓄積される。症状として、視覚障害、運動機能障害や生活の質の低下などが現れ、症状の発生が致死的な結果となる場合もある。

NMOSDの3分の2以上の患者では、病原性の抗体であるAQP4抗体が検出されている。AQP抗体は中枢神経に存在する細胞アストロサイトを標的とし、視神経や脊髄、脳の炎症性脱髄病変につながることが知られている。炎症性サイトカインであるIL-6は、NMOSDの発症に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。

2006年に視神経炎および脊髄炎を伴う視神経脊髄炎の診断基準、2007年に視神経炎や脊髄炎のみの症例に対するNMOSDの基準が提唱された。2015年に両疾患を整理・統合し、広義の疾患群として新たにNMOSDの概念が提唱され、現在広く用いられている。

IL-6シグナルを阻害、NMOSD再発抑制に期待

サトラリズマブは中外製薬が創製した、ヒト化抗IL-6レセプターリサイクリング抗体。NMOSDの病態に関連するIL-6シグナルを阻害することで、NMOSDの再発を抑制することが期待されている。視神経脊髄炎(Neuromyelitis Optica:NMO)およびNMOSD患者を対象とした2つの第3相国際共同治験において、免疫抑制剤によるベースライン治療に対する上乗せ投与および単剤投与でそれぞれ主要評価項目を達成。これらの2試験は希少疾患に対して行われた大規模な臨床試験の一つだ。

日本で視神経脊髄炎および視神経脊髄炎関連疾患を対象として希少疾病用医薬品の指定を受け、欧州および米国においても同じ疾患群に対して希少疾病用医薬品の指定を受けている。また、2018年12月には米国食品医薬品局(FDA)からBreakthrough Therapy(画期的治療薬)の指定を受けた。2019年に欧州医薬品庁(EMA)およびFDAより承認申請が受理され、また厚生労働省に承認申請を行っている。

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