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新型コロナウイルス特異的な抗体の開発に成功、簡易イムノキット構築へ-横浜市大

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2020年04月21日 PM12:15

迅速診断開発のためにSARSやMERSなどと交差反応しない抗体が必要

横浜市立大学は4月20日、)抗原を特異的に検出できるモノクローナル抗体の開発に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の梁明秀教授を中心とした共同研究グループによるもの。


画像はリリースより

新型コロナウイルス感染症()の感染者数は200万人を超え、世界全体の死者数が16万人以上と報告されており、世界的に公衆衛生上の非常に大きな問題として早急な対策が求められている。また、日本における感染者数も1万例を超え、今後の感染拡大が懸念されている。現在、病原体検査は、PCR法などのウイルス遺伝子検出法のみが適用されているが、診断までに平均約4~6時間を要し、特殊な機器を必要とするため、検査数が限定されている状況だ。医療現場で使用可能な迅速診断法として、血清抗体検出キットが開発されているが、現在のところ、体外診断用医薬品として承認された試薬(もしくは製品)はなく、また、病原体に対する免疫応答(抗体)を確認する試験法であるため、感染早期の検査には適していない。新型コロナウイルス感染症の実態を把握し、適切な感染対策と適正な医療を提供するためにも、感染早期における迅速簡易診断法の開発は緊急課題だ。一方、検査キットの開発には、新型コロナウイルス抗原を正確に認識できるモノクローナル抗体の開発が必須となる。現在、使用されている抗体は、SARSコロナウイルスやその他の関連ヒトコロナウイルスなどへの交差反応が十分に検証されていないものが多く、新型コロナウイルスのみを的確に検出できる高性能なモノクローナル抗体はまだ実用化されていない。

新型コロナウイルス特異的抗体20種、うち6種は高品質の抗体

今回研究グループは、まず新型コロナウイルスを構成するヌクレオカプシドタンパク質(NP)を、梁教授の保有技術であるコムギ胚芽無細胞法を応用した病原体タンパク質合成法で大量に調製。次に、これを免疫原としてマウスに接種し、NPに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを144株樹立した。この中から新型コロナウイルス抗原のみを特異的に認識する抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングしたころ、そのうちの20株が選択された。そこで、これらの抗体についてさらに解析を進め、それぞれが認識する部位を明らかにし、また、各国で分離されている新型コロナウイルス株間においても保存されていることを確認した。これは、今回取得した抗体が、新型コロナウイルスを網羅的に検出できる優れた特性を有することを示唆するもの。

さらに、今回得られた抗体は新型コロナウイルスとのみ反応し、他のヒトコロナウイルスとは全く反応しないことが判明。また、バイオレイヤー干渉法技術を用いた、抗原抗体相互作用解析により、これらの抗体は抗原タンパク質であるNPに対して高い親和性を有することがわかった。加えて、得られた抗体のうち6株は、免疫染色やELISA法などにも使用できる高品質の抗体であることが判明した。

免疫学的手法を応用した検査キットの開発は、用いられる抗体が病原体を正確に認識できるかどうかに依存する。現在、まだキットの開発には着手できていない状況だが、今後、この高性能な抗体を用いることで、新型コロナウイルスのみを簡単・迅速に検出できるイムノクロマトキットの開発が期待される。ウイルス抗原タンパク質を検出できる簡易イムノキットが構築できれば、特別な装置を必要とせず、外来やベッドサイドで、簡単な操作で短時間にウイルスを検出することが可能となる。今後、迅速診断法を確立し、精度の向上を図ることができれば、PCR検査との感度比較を行った上で、PCR検査前のスクリーニング検査として使用できる可能性がある。研究グループは、「日本発の信頼性の高い簡易抗原検出キットの実用化をできるだけ早期に実現するため、臨床検査試薬の製造・販売を行う企業との連携を模索していく」と述べている。

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