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大動脈瘤のバイオマーカーとして、信頼度が高い2つのタンパク質を発見-国循

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2020年04月20日 PM12:45

臨床検査に利用できるほど高精度な大動脈瘤のバイオマーカーは未だない

国立循環器病研究センターは4月17日、動脈硬化性大動脈瘤における2種の新たなバイオマーカーを世界で初めて発見し、発症診断に使用できることを示したと発表した。これは、同研究所創薬オミックス解析センターの南野直人・元特任部長(現客員研究員)、血管外科の松田均部長、病理部の植田初江・元部長(現客員研究員)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

大動脈瘤をはじめとする血管疾患は、高齢化とともに増加する。しかし、「サイレントキラー」と呼ばれるように、症状を自覚することなく進行し、気付いた時には重症となっていることがしばしばある。大動脈瘤も、破裂や解離が起こってから初めて気が付く場合が多く、死亡率も高い。このため、他の疾患の診断目的でMRI検査、エコー検査などの画像診断を受けたときに、偶然に発見される場合が大半だ。

また、これまでに大動脈瘤のバイオマーカーが報告されているが、臨床検査として利用できるほど信頼度の高いものはない。信頼度の高いバイオマーカーを用いて早期に大動脈瘤を発見できれば、拡大を抑制する薬品の服薬と画像診断で経過を観察し、危険度が高い場合は人工血管置換やステント導入により、破裂などを防止することが可能となる。

患者血液で「」「」が有意に増加、胸部/腹部の大動脈瘤で確認

研究では、同センターで大動脈瘤の人工血管置換手術切除された大動脈瘤壁の病理診断後の残余組織について、患者の同意を得て、プロテオーム解析を実施。大動脈瘤組織に含まれるタンパク質を網羅的に調べて比較し、胸部大動脈瘤の組織で変動するタンパク質の中から、血液中でも変動する2種のタンパク質として、「Niemann-Pick disease type C2 protein」(NPC2)と「insulin-like growth factor-binding protein 7」(IGFBP7)を見つけた。NPC2とIGFBP7は、動脈硬化性大動脈瘤の平滑筋細胞や泡沫細胞などで、産生が大きく亢進していた。

従来のように瘤部と周辺部の単純な比較では有用なバイオマーカー候補を見出せないことから、大動脈瘤の進行に伴い変動するタンパク質で各組織の進行度を評価する方法を開発。その進行度評価に従ってタンパク質の発現量を比較することで確認された。

また、胸部大動脈瘤で手術を受けられた患者と健康な人の血液濃度を比較。この2種のタンパク質マーカーの有意な増加が認められた一方、すでに報告されている大動脈瘤のバイオマーカー「thrombospondin1」()は有意な減少を示した。これらのデータについて統計解析を行うと、NPC2とIGFBP7では0.90と高い精度(1.0で完全に識別)で大動脈瘤の有無を識別できることがわかった。さらに、3つをまとめて評価すると、0.95と極めて高い精度で識別可能でした。加えて、これらのバイオマーカーは、胸部のみならず腹部大動脈瘤でも有用であることが示された。

現在、NPC2、IGFBP7の測定は市販キットで行われているため高精度ではない。今後、研究グループは企業と協力し、高精度な測定法の開発を進める予定。また、国循バイオバンクの試料を用いて、、動脈硬化性疾患、無関係な疾患の患者、健康な人の血液濃度を測定し、バイオマーカーの性能と有用性を評価し、臨床検査として利用できることを証明して行くとしている。

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