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ピロリ菌感染時の胃における新たな免疫応答と防御機構を明らかに-理研ほか

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2020年04月07日 AM11:45

近年注目の自然リンパ球(ILCs)、胃における役割は?

(理研)は4月2日、マウスの胃に、細菌感染に対して防御的に作用する免疫応答が存在することを発見したと発表した。この研究は、理研生命医科学研究センター粘膜システム研究チームの佐藤尚子専任研究員、大野博司チームリーダーらの国際共同研究グループによるもの。研究成果は、「Immunity」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

これまで、胃は主に食物を消化・殺菌する臓器であり、小腸や大腸と比べて免疫学的な寄与は低いと考えられてきた。また、胃は殺菌のために強酸性に保たれていることから、共生細菌はほとんど存在しないと考えられていたが、近年、数は腸管と比べて少ないものの、ヒト、マウスともに共生細菌が存在することが明らかになっている。

ヒトではピロリ菌()に感染すると、潰瘍やがんが誘導されることが知られており、実際に、胃の不調を感じた際にはピロリ菌感染を疑い除菌を行う。しかし、ピロリ菌保有者であっても症状がない時期もあり、どのような免疫応答が感染防御に関与しているかはあまりわかっていない。特に、近年その多様な機能で注目されている自然リンパ球(ILCs)については、胃における役割に関してこれまで報告されていなかった。

マウス胃共生細菌<IL-7とIL-33<ILC2<<IgA産生<防御

今回、国際共同研究グループは、マウスの胃に存在する自然リンパ球をフローサイトメトリーで解析。その結果、炎症に関与する1型自然リンパ球(ILC1)は小腸に比べて少なく、感染防御に関与する3型自然リンパ球(ILC3)はほとんど存在しない一方、ほとんどが2型自然リンパ球(ILC2)で占められていることがわかった。

ILC2は腸や肺では細菌叢の影響を受けないと考えられていたが、無菌マウスの胃では、SPFマウス(特定の病原性微生物などが存在せず、一般的な共生細菌による細菌叢を持つ)の胃と比較してILC2数が減少していることが判明した。この結果と細菌叢解析により、マウスの胃では、共生細菌であるS24-7科の菌数がILC2数の増加と相関することがわかった。これらのことは、胃に存在するILC2は他の臓器とは異なり、共生細菌の影響を受けることを示す。さらに、マウスの胃では、共生細菌によりIL-7とIL-33が多く産生されることでILC2が活性化し、B細胞が分化誘導され、分泌型の免疫グロブリンA()産生が誘導されることで、防御的に機能していることが示唆された。

ピロリ菌に対してもILC2が胃の防御の要

研究グループは次に、強い病原性を示すピロリ菌とILC2との関係性を調べるために、無菌マウスにピロリ菌を感染させ、胃における免疫応答を解析。その結果、B細胞の増加が見られた。このB細胞は、ピロリ菌に特異的なIgAを多く産生し、ILC2から産生されるインターロイキン-5(IL-5)により分化誘導されることも明らかになり、ILC2が胃の防御の要であることが示された。

今回の研究により、胃に存在するILC2は、ピロリ感染時だけでなく共生細菌の一種であるS24-7科の菌によっても誘導されることが明らかになった。この成果は、胃の免疫学的な重要性を示したものであり、胃が持つ重要な防御機能についても指摘している。今後は、ILC2を誘導する特定の菌を同定することで、ピロリ菌感染の排除に働くような防御機構を誘導できると考えられるという。研究グループは、「将来的には、ILC2を誘導するS24-7科の菌を含ませたヨーグルトなどの食品を日常的に摂取することにより、あらかじめ胃の免疫応答を惹起し、感染に対する防御機能を高めることができる可能性がある」と、述べている。

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