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概日時計の周期を延長させる新規化合物を2種発見、褐色脂肪細胞分化も促進-名大ほか

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2020年04月01日 AM11:30

概日時計の1日リズムを調節する新たな化合物を発見し、その作用を解析

名古屋大学は3月31日、概日時計の周期を延長させる新たな化合物を発見し、その作用メカニズムの解明に成功したと発表した。この研究は、同大トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)の廣田毅特任准教授、サイモン ミラー研究員、相川佳紀研究員らが、同ITbMの伊丹健一郎教授、フロハンス タマ教授、佐藤綾人特任准教授、南カリフォルニア大学のスティーブ ケイ教授、京都大学の大石真也准教授、理研の平田邦生専任技師、名古屋大学の阿部一啓准教授、慶應義塾大学医学部の羽鳥恵特任准教授、孫ユリ特任助教らと共同で行ったもの。研究成果は、「Nature Chemical Biology」に掲載されている。


画像はリリースより

朝目覚めて、夜眠るというように、生命活動の多くは1日の周期で繰り返すが、これらのリズムを司る体内の仕組みを「概日時計」と呼ぶ。概日時計は、時計遺伝子ならびに時計タンパク質の相互作用によって構成されており、その分子機構の解明に寄与した3人の研究者に2017年のノーベル生理学・医学賞が授与された。しかし、概日時計がどのように1日という長い周期で、しかも、安定して時を刻むことができるのか、その仕組みは未だに謎に包まれている。

研究グループは、ヒトの培養細胞を用いて化合物が概日リズムに与える影響を大規模に解析する手法を確立し、化学と生物学とを融合させたケミカルバイオロジーの手法を応用することで、1日周期の決定に関わる重要な分子機構を明らかにしてきた。しかし、これまでに発見した化合物の中には、作用メカニズムの不明なものが数多くあったため、その作用を解析することによって、概日時計の制御機構の理解が深まるとともに、機能制御への応用が可能になると期待されていた。

KL101とTH301は時計タンパク質CRY1とCRY2それぞれに選択的に作用

今回、研究グループは概日リズムの周期を延長させる新たな化合物KL101およびTH301の作用メカニズムを解析。その結果、KL101は時計タンパク質のCRY1を、TH301はCRY1の類似タンパク質であるCRY2をそれぞれ選択的に安定化して活性化することを見出した。研究グループは以前、CRY1とCRY2の両方に作用する化合物KL001を報告したが、CRY1とCRY2は非常によく似ており、それぞれに対して選択性を示す化合物の開発は非常に困難と考えられてきた。そのため、KL101とTH301の作用の選択性に関する発見は大きな驚きだったという。

これらの化合物の働きを知るために、研究チームはX線結晶構造解析によって、CRY1およびCRY2と化合物の相互作用を原子レベルで解析した。その結果、化合物と相互作用する部位はCRY1とCRY2の間でほぼ同じであり、なぜ作用の選択性が生まれるのかを説明することができなかった。さらにCRY1とCRY2の機能解析を進めた結果、化合物が結合するポケットの外に存在し、一定の構造をとらないCRY1とCRY2の部位が化合物の選択的な作用に必要であることが明らかになった。これは、作用の選択性を化合物の結合ポケットが決める、という定説とは異なる予想外のメカニズムだったという。

KL101とTH301によるCRY1とCRY2の調節が、褐色脂肪細胞の分化を促進

研究グループはさらに、CRY1およびCRY2と代謝疾患の関係に注目して研究を進めた。その結果、CRY1とCRY2の両方を失ったマウスにおいて、褐色脂肪細胞の分化が起こりにくいことを見出した。そこで、CRY1とCRY2のそれぞれを活性化するKL101とTH301の効果を解析したところ、どちらの化合物も褐色脂肪細胞の分化を促進することを発見した。これらの結果は、CRY1とCRY2が概日時計の機能と褐色脂肪細胞の分化を結ぶ重要な因子であることを示している。

光や食事が1日中いつでも手に入る現代社会では、概日時計の乱れが深刻化しており、睡眠障害やメタボリックシンドロームなど、さまざまな疾患との関連が報告されている。研究グループは、「エネルギーを蓄積することで肥満を導く白色脂肪細胞に対し、褐色脂肪細胞は熱を産生してエネルギーを消費する働きをもつことから、KL101やTH301を用いて褐色脂肪細胞を増やすことができれば、概日リズムの異常の解消だけでなく、肥満の解消にも応用できる可能性がある」と、述べている。

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