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定期的な歯科受診が咀嚼能力の低下予防に有効、吹田研究の解析により-国循ほか

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2020年03月11日 PM12:00

咀嚼能力の低下により、最終的にメタボや動脈硬化性疾患の発症へ

国立循環器病研究センターは3月6日、吹田研究参加者を対象に解析した結果、定期的な歯科受診が、食物を細かくかむ能力(咀嚼能力)の低下の予防に有効であることを示したと発表した。この研究は、同研究センター予防健診部の宮本恵宏部長、新潟大学大学院医歯学総合研究科の小野高裕教授、大阪大学大学院歯学研究科の池邉一典教授らの研究グループによるもの。研究成果は、歯科医学の国際誌「Odontology」に掲載されている。

近年、高齢期の軽微な口腔機能の低下を反映したオーラルフレイルと呼ばれる症候が提唱された。歯科受診によって口腔機能の低下に早期に気づき、オーラルフレイル予防に努めることが重要だと考えられている。

一方、さまざまな口腔機能のひとつに、食物を細かくかむ能力である「咀嚼能力」がある。加齢に伴い歯数は減少し、咀嚼能力が低下することで栄養摂取に悪影響を及ぼし、最終的にメタボリックシンドロームや動脈硬化性疾患の発症へとつながることが、これまでの吹田研究の結果からも示唆されている。咀嚼能力の低下を予防することが重要となるが、これまでに歯科定期受診(かかりつけの歯医者を持ち、症状がなくても定期的に受診して歯と口の健康を保つこと)と咀嚼能力との関係についての報告はほとんどなく、エビデンスが求められていた。


画像はリリースより

初回歯科検診および2回目歯科検診の両方を受診した1,010名を対象に解析

今回、研究グループは、吹田研究参加者である50~79歳の都市部一般住民のうち、初回歯科検診、および2回目歯科検診(初回から4年以上経過)の両方を受診した1,010名(男性430名、女性580名)を対象に解析。咀嚼能力の測定には、専用に開発されたグミゼリーを30回咀嚼して増えた表面積を算出する方法を用いた。その結果、継続的な歯科定期受診を行っている対象者は、咀嚼能力が低下しにくいことが明らかとなり、加齢に伴う口腔機能の低下を軽減する上で、継続的な歯科定期受診が有効である可能性が示された。

今回の研究成果の意義は、これまで多く報告されてきた、歯の数やかみ合わせの状態などの形態的な因子だけではなく、歯科定期受診という行動科学的因子が咀嚼能力に影響を及ぼすことを明らかにしたことだ。歯科治療による対応だけでなく、口腔健康への関心を向上させるポピュレーションアプローチが、口腔機能低下を予防し、ひいては動脈硬化性疾患やフレイル予防の新たな戦略になると考えられるという。研究グループは、「今後、医科歯科連携のもと、さらなるエビデンスを構築することが今後の課題と考えられる」と、述べている。

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