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網膜中心動脈閉塞症に対する医師主導治験で「KUS121」の安全性・有効性を確認-京大

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2020年03月05日 AM10:45

APTase活性を阻害する化合物「KUS」

京都大学は3月3日、医師主導治験により、網膜中心動脈閉塞症に対して同大で研究開発してきた化合物KUS121の投与安全性と視力改善効果を明らかにしたと発表した。これは、同大医学部附属病院 池田華子特定准教授と同大医学研究科 辻川明孝教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Lancet Public Health」にオンライン掲載されている。

画像はリリースより

網膜中心動脈閉塞症は、網膜を灌流する唯一の血管である網膜中心動脈が閉塞することによって、急激に視力低下、視野(見えている範囲)狭窄が起きる疾患。いろいろな治療が試されているが、これまで、発症後に視力を改善させる標準的な治療法は存在しなかった。

細胞内には、valosin-containing protein(VCP)という、アデノシン三リン酸(ATP)を加水分解する作用(ATPase)を持つタンパク質が多量に存在する。これまで研究グループは、このAPTase活性を阻害する化合物「Kyoto University Substance(KUS)」の研究開発を行ってきた。KUSは、細胞内のエネルギーであるATPの減少を抑制し、さまざまな細胞の細胞死を抑制すること、緑内障や網膜変性、虚血性眼疾患のモデル動物に投与することで、網膜細胞の細胞死を抑制し、病気の進行を緩徐にすることが明らかにされてきている。つまり、KUSは神経保護剤として、さまざまな眼疾患に対する進行抑制治療薬となり得ると考えられる。

研究グループは今回、KUSの臨床応用に際し、より短期間で神経保護作用を検討するために、対象疾患を網膜中心動脈閉塞症に設定。また、KUSの中では効果が強く安全性の高い「」を使用した。さらに、初めてヒトに投与する前に必要となる安全性試験を実施し、治験の準備を進めてきた。

KUS121投与後、9例中7例(78%)の視力が有意に改善

「非動脈炎性網膜中心動脈閉塞症に対するKUS121の3日間硝子体内投与による安全性および有効性に関する第1/2相試験」(iACT-15014, UMIN000023979)は、医学部附属病院の医薬品等臨床研究審査委員会(治験審査委員会)の承認後、2016年9月に治験届けを提出し、開始された。

網膜中心動脈閉塞症を発症し、発症後48時間以内に京都大学病院眼科を受診した患者に対して治験の説明を行った後、同意した9名が治験に参加。KUS121を眼内に注射で投与し、3か月間、視力や視野の状態に関して経過観察した。

その結果、特に重篤な副作用は認めなかった。また、全ての例で、有意な視力改善を認めた。WHOは視力0.05未満を失明の定義としているが、同治験においては最終視力が0.05以上、つまり、失明を脱した症例は9例中7例(78%)だった。これまでの論文等での研究成果報告では、網膜中心動脈閉塞症の発症後に視力が改善する割合は36~52%であり、およそ70%で最終視力が0.05未満、つまり失明状態に陥っていた。そのため、同治験の結果は、KUS121投与による視力改善効果を示唆している。

目薬による治療が可能か検討中、治療法のない眼疾患への効果に期待

今後、網膜動脈閉塞症に対しては、KUSの開発目的で設立されたベンチャー会社「株式会社京都創薬研究所」による企業治験として、検証試験(第3相試験)が行われる予定。KUS121の視力改善効果が次の試験で検証されれば、網膜動脈閉塞症に対する視力改善薬として実際の医療現場で使用できる。

またKUS121は、網膜動脈閉塞症のみならず、現在治療法の無い網膜変性疾患や、緑内障など他の眼疾患においても、病気の進行を抑制する効果が期待される。今回の治験ではKUS121を眼内に直接注射で投与しているが、慢性に進行する疾患では、頻回に注射を繰り返すことは現実的ではないことから、目薬による治療が可能か、現在検討を進めているという。

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