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胆管がんで「治療経過が良い」型かどうかを判別することが可能に-東北大ほか

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2020年02月28日 PM12:15

胆管がんの胆管内乳頭状腫瘍の1型・2型について調査

東北大学は2月27日、胆管がんにおける胆管内乳頭状腫瘍について調査し、1型と2型では遺伝子の働きやタンパク質の量などの性質が異なり、2型では治療後の経過が悪いことを明らかにしたと発表した。これは同大大学院医学系研究科消化器外科学分野の青木泰孝大学院生、畠達夫非常勤講師、青木豪助教、水間正道院内講師、海野倫明教授、同大病態病理学分野の大森優子助教、古川徹教授、札幌東徳洲会病院医学研究所の小野裕介部門長、旭川医科大学医学部内科学講座の水上裕輔准教授のグループによるもの。研究成果は「Journal of Pathology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

胆管がんは診断・治療が難しいがんとして知られ、2017年度のがん統計においては全国での年間死亡者数が 1万9,000 人ほどと、各種臓器がん死亡数中第6位である。そのため、早期診断に有用なバイオマーカーや効果的治療法の開発が望まれている。胆管がんの中には、「胆管内乳頭状腫瘍」と呼ばれる特徴的な形態を示す腫瘍が存在することが 2001 年に日本の研究者により報告されたが、その臨床的な意義については不明な点が多く、論争の的となっていた。さらに、胆管内乳頭状腫瘍には病理学的に1型、2型の2種類の腫瘍が存在することが示唆されていたが、それらがどのように異なるのか、詳細な性質は不明だった。そこで、1型および2型胆管内乳頭状腫瘍の特徴、独自性、臨床病理学的な意義を明らかにすることを目的として、3つの施設において共同研究を行った。

1型は非浸潤で治療経過が比較的良く、2型は浸潤がんが多く治療経過が悪い

東北大学で外科手術を受けた胆管内乳頭状腫瘍の36例を、病理学的形態を指標に1型22例、2型14例に分け、臨床病理学的特徴、31個のがん関連遺伝子変異、および、がん関連タンパク質の発現異常について調べた。1型胆管内乳頭状腫瘍は細かく細い突起状の形態が特徴の腫瘍で、肝臓内の胆管に主に発生し、がんが管腔内にとどまる非浸潤がんが多く、治療経過も比較的良いことがわかった。一方で、2 型はゴツゴツした不揃いな形態を示し、肝臓外の胆管に主に発生し、胆管周囲に浸潤する浸潤がんが多く、治療経過が悪いことが示された。

また、遺伝子解析では、粘液産生すいがんで特徴的に見られるGNAS遺伝子やKRAS遺伝子の変異、進行したすい臓がんに多いSMAD4遺伝子や TP53遺伝子の変異、大腸がんで多く見られるWNT遺伝子群の変異が確認された。さらに、胆管がんではあまり知られていなかったSTK11遺伝子の変異が認められた。特に、KRAS遺伝子とGNAS遺伝子の変異は1型胆管内乳頭状腫瘍に、TP53遺伝子とSMAD4遺伝子の変異は2型胆管内乳頭状腫瘍に多く認められた。これらの結果は、胆管内乳頭状腫瘍には粘液産生すいがんに類似した遺伝子の変異を示し、治療経過が比較的良い1型と、一般的なすい臓がんや胆管がんに一部類似した性質を示し、治療経過の悪い2型が存在することを明瞭に示している。

今回の研究成果は、胆管内乳頭状腫瘍には性質の異なる2つの型があり、特徴をとらえて早期に診断することが重要であることを示した。「検出された遺伝子異常は診断マーカーや治療標的の候補となるもので、難治性である胆管がんの中で胆管内乳頭状腫瘍を効率よく見出し治療する方法が開発されることが期待される」と、研究グループは述べている。

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