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ジスフェルリン異常症の新規治療標的として「AMPK」を同定-東北大ほか

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2020年02月27日 AM10:45

ジスフェルリンタンパク質の異常によって発症する筋ジストロフィー

東北大学は2月25日、ジスフェルリンタンパク質の異常によって発症する筋ジストロフィー()の治療標的となり得る新規の因子を発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科神経内科学分野の青木正志教授、小野洋也非常勤講師、鈴木直輝非常勤講師、割田仁院内講師ら、東北大学加齢医学研究所の菅野新一郎講師、東京医科大学病態生理学分野の林由起子教授、国際医療福祉大学基礎医学研究センターの三宅克也教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国遺伝子細胞治療学会の機関誌「Molecular Therapy」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

国の指定難病である筋ジストロフィーは、いまだ根治療法のない難治性の遺伝性疾患で、筋肉の萎縮や筋力の低下などを示す進行性の筋疾患。筋ジストロフィーは、筋細胞膜を構成するタンパク質の異常や欠損、筋細胞膜の損傷からの修復に必要な機構の破綻により、筋細胞が正常に維持されなくなることが発症の原因とされている。

東北大学医学系研究科神経内科学分野は、1998年に筋細胞の膜タンパク質ジスフェルリンの欠損によって発症する筋ジストロフィー(ジスフェルリン異常症)の原因遺伝子を同定して以来、臨床遺伝子診断を通じてジスフェルリン異常症の病態解明に貢献してきた。ジスフェルリンは筋細胞膜の修復に重要な役割を持つことが明らかにされており、近年、ジスフェルリンに結合し、筋細胞膜の修復に関与するタンパク質が存在することが報告されている。しかし、筋細胞膜の修復の分子機構の詳細は明らかにされていなかった。

AMPK活性化剤メトホルミンの投与で骨格筋の障害を改善、モデル動物で確認

今回の研究では、初めに、ジスフェルリンの一部分に結合するタンパク質を培養細胞の抽出物から単離し、質量分析装置を用いたプロテオミクス解析によって複数の結合タンパク質を同定。続いて、同定された候補タンパク質の一つであるAMPKに注目し、このタンパク質が筋細胞膜の障害に対してどのように働くのか、レーザー照射による筋細胞膜障害実験によって解析した。その結果、マウスにおいてレーザー照射により骨格筋を損傷させると、AMPKタンパク質複合体が損傷部位に集積し、また、筋肉由来の培養細胞においてAMPKの働きを抑制すると筋細胞膜修復機能が低下することを発見したという。ジスフェルリンを欠損させたマウスにおいて、レーザー照射により骨格筋を損傷させると、AMPK複合体の損傷部位への集積が遅延することから、ジスフェルリンがAMPK複合体の集積に必要であり、AMPK複合体集積の足場として機能している可能性を見出した。

また、ジスフェルリン変異を有する患者由来の培養細胞において、AMPKを活性化する薬剤アカデシンを投与した結果、筋細胞膜修復が改善した。また、ジスフェルリン異常症のモデル動物(ゼブラフィッシュおよびマウス)において、AMPK活性化剤メトホルミンを投与すると骨格筋の障害が改善することを確認したという。

AMPK複合体が損傷を受けた筋細胞膜の修復において重要な役割を担っているという新たな知見は、根治療法がいまだないジスフェルリン異常症の治療法の開発に結びつく可能性がある。研究グループは、同研究で得られた知見を発展させることで、ジスフェルリン異常症のみならず、筋ジストロフィー全体の新しい治療法の開発が進むことが期待される、と述べている。

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