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核酸医薬miR-634-LNP製剤、膵臓がんマウスへの投与で抗腫瘍効果を確認-東京医歯大

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2020年01月14日 AM11:30

がん抑制型ヒトマイクロRNAを薬剤輸送システムのLNPに内包した製剤

東京医科歯科大学は1月8日、がん抑制型ヒトマイクロRNA(miR)であるmiR-634をlipid nanoparticle(LNP)に内包した「miR-634-LNP製剤」を開発し、膵臓がんの担がんマウスにおいて、miR-634-LNP製剤の全身投与による顕著な抗腫瘍効果を確認したと発表した。この研究は、同大難治疾患研究所分子細胞遺伝分野の井上純准教授、稲澤譲治教授、同大学院生の五木田憲太朗らの研究グループによるもの。研究成果は、国際科学雑誌 「Molecular Therapy-Nucleic Acids」オンライン版に掲載された

miRは、約22塩基からなる機能性RNAであり、標的遺伝子の転写産物に直接結合することで、遺伝子発現を負に制御する働きがある。ヒトでは2,500種以上のmiRの存在が知られており、発生、分化、細胞増殖・生存、代謝調節などさまざまな生命現象に深く関与している。近年、核酸医薬として、がん抑制型miRの補充療法が注目されている。しかし、この治療戦略が実用的に臨床応用されるためには、抗腫瘍効果を有する新たながん抑制型 miRを同定し、さらにそのmiRを標的とする腫瘍細胞に効率的に送達して機能させるためのdrug delivery system(DDS)の開発が急務の課題だ。

研究グループは、これまでに、ヒトmiRライブラリーの機能的スクリーニングから複数のがん抑制型miRを同定し、抗がん核酸薬としての可能性を追究してきた。それらの中でもmiR-634は、ミトコンドリアの恒常性維持、オートファジー、抗酸化ストレス(レドックス)などの「細胞内代謝」や、抗アポトーシスといった「細胞生存」に関連する遺伝子の複数を同時にかつ直接的に抑制するがん抑制型miRであり、マイクロRNA核酸抗がん薬の有望な創薬シーズとして期待されていた。


画像はリリースより

腫瘍細胞へのmiR-634の効率的な送達、標的遺伝子の発現抑制などを確認

今回の研究では、合成2本鎖miR-634を、薬剤輸送システムの1つのLNPに内包した「miR-634-LNP製剤」を開発。核酸抗がん製剤としての有用性を検証することを目的に研究を行った。まず、膵臓がんを含むさまざまながん種由来の培養細胞株(117種)において、miR-634に対する感受性を調べるために、各細胞株にリポフェクション法を用いてmiR-634を導入。その結果、117株中45株(38.5%)で、顕著な細胞生存率の低下が認められた。また、膵臓がん細胞株であるBxPC-3、PSN-1、CFPAC-1へのmiRNA-634の導入は、標的遺伝子の発現抑制と顕著なアポトーシス性細胞死を誘導することが明らかになった。

次に、担がんマウスの腫瘍細胞にmiR-634を効率的に送達するために、合成2本鎖miR-634をLNP(L021-LNP、エーザイ株式会社より供与)に内包させたmiR-634-LNPを製剤化。そして、BxPC-3細胞を用いた担がんマウスに対するmiR-634-LNPの全身投与による治療実験を行った。その結果、コントロールとなるmiR-NC(negative control)-LNPの投与群と比較して、miR-634-LNPの投与群では腫瘍細胞へのmiR-634の効率的な送達と標的遺伝子の発現抑制、さらに顕著な抗腫瘍効果が確認されたという。miR-634-LNP投与による肝臓への障害性は認められなかった。これらの結果より、miR-634-LNPのがん治療における有用性が示唆された。

がん抑制型miRを用いた核酸抗がん薬は、1種類の分子をターゲットにする分子標的薬とは異なり、複数のがん関連遺伝子をターゲットにすることが特徴であり、その有用性が期待されている。同研究では、がんにおいて変調を来した細胞内代謝と細胞生存システムに関連する複数の遺伝子を同時に標的にするmiR634をLNPに内包化させることで、miR-634の腫瘍細胞への効率的な送達と核酸抗がん薬としての有効性が発揮されることを動物レベルで実証した。同研究成果は、膵臓がんを含むさまざまながん種に対する新たな核酸抗がん薬の実用化につながるものと期待される、と研究グループは述べている。

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