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自殺未遂で救急受診後1年以内の自殺リスク、標準化死亡比の約57倍-米NIH

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2019年12月19日 PM01:00

カリフォルニア州の救急科受診者の動向を複数年追跡

米国立衛生研究所(以下、NIH)は12月13日、カリフォルニア州の救急科受診と自殺率に関する研究成果について発表した。これは、カリフォルニア大学公衆衛生学のSidra Goldman-Mellor博士らの研究グループによるもの。成果は、「JAMA Network Open」に掲載されている。


※画像はイメージ

自傷行為または自殺念慮(自殺という能動的な行為で人生を終わらせようという考え)でカルフォルニア州内の救急科を受診者する人は年間50万人以上とされる。一方で、受診者の「その後」は、ほとんど知られていない。死亡記録と救急科受診歴が関連づいた米国のデータはほぼないが、自殺未遂者や自殺念慮のある人をケアするためには、受診後の経過を把握することが必要不可欠だ。そこで今回、研究グループは、同州在住者で、2009年1月1日~2011年12月31日までに同州の救急科を訪れた受診履歴と死亡記録を関連付けて分析した。

自殺未遂経験者の受診/退院後の自殺は高確率、合併症も関連

研究グループはまず、救急受診者をパターンごとに3つのグループに分けた。1)自殺願望の有無は不明だが明らかに自傷行為のあった群(8万3,507人)、2)自殺念慮はあるものの自傷行為はない群(6万7,379人)、3)自傷行為やその意思のない参考群(49万7,760人)。それぞれの群で調査対象期間中の自殺率を統計学的に検討。結果、自傷行為により救急受診/退院後1年で自殺に至る確率は、カリフォルニア州の標準化死亡比よりも約57倍高いことがわかった。また、自殺念慮のある群では約31倍であった。参考群の自殺率は3群の中では一番低かったが、それでも約2倍高かった。これは同州の救急科受診者で自殺リスクのある患者の定期的なスクリーニングの必要性を示唆している。

死因の一番は薬物の過剰摂取で、自傷行為があった群で72%、自殺念慮のあった群で61%にのぼることがわかった。自殺率としては、いずれの群でも65歳以上の男性が一番多く、若い女性(10~24歳)よりも高かった。また、人種別では非ヒスパニック系白人が最も高く、(低所得者向けの米国の医療給付制度)受給者は、他の私的および公的保険利用者よりも自殺率が低かった。

また、合併症と自殺率にも関連があることがわかった。自傷行為のある群では、双極性障害や不安障害などの精神疾患などの併発により、自殺によって命を絶つ傾向にあり、自殺念慮のある群では、うつ症状があると自殺リスクが上昇。参考群においても、双極性障害やうつ、アルコール依存症によってリスクが高まることもわかった。

研究グループは、「今回の結果は、自殺リスクの高い人に対して適切なケアを行うのに有用なデータであるといえる。がんや心臓疾患において患者動向をフォローアップしているのと同じように、自殺のリスクが高い人に対してのフォローアップも行っていくことが必要だ」と、述べている。

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