医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 自己免疫性水疱症、自己抗体が血管から皮膚へ移行する仕組みを解明-京大

自己免疫性水疱症、自己抗体が血管から皮膚へ移行する仕組みを解明-京大

読了時間:約 2分
このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年10月24日 AM11:15

自己抗体はどのように血中から組織へ分布するのか

京都大学は10月21日、炎症のない状態の血管から皮膚への抗体移行のメカニズムはカベオラによる小胞輸送を利用し、チロシンキナーゼのひとつであるAblファミリーチロシンキナーゼにより制御されること、Ablファミリーチロシンキナーゼ阻害薬は皮膚への抗体移行を阻害し疾患モデルマウスの症状を抑制しうることを見出したと発表した。この研究は、同大学大学院医学研究科皮膚科学講座の椛島健治教授、江川形平同助教、小野さち子同日本学術振興会特別研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Communications」にオンライン掲載された。


画像はリリースより

皮膚に水ぶくれを生じる「」の一群は、皮膚の接着分子などに自己抗体が産生され、血中を循環し、皮膚へ沈着することで発症する。自己抗体や自然抗体をふくむ免疫グロブリンG(IgG)はリンパ組織で作られ、血中へ入った後、末梢組織である皮膚やさまざまな臓器に分布する。生体内で自己抗体を含むIgGが、どのように血中から組織へ分布するかの詳細は未解明だった。IgGのレセプター分子が血管壁を介した抗体の輸送に関わることは昔から想定されており、近年ではAblファミリーチロシンキナーゼが炎症下での血管の透過性を制御しうる可能性が高いことが、脳梗塞や肺炎モデル、アレルギーモデルで支持されていた。また、研究グループは、炎症のある皮膚への自己抗体の移行や、胎盤を介した胎児への自己抗体の移行に着目し、研究を進めてきていた。こうした背景から、今回研究グループは、これまでの研究を発展させ、皮膚への抗体の輸送という観点で、IgGのレセプター分子やAblファミリーチロシンキナーゼの血管壁バリア機能の制御作用を検討した。

小胞構造「」を利用して皮膚に移行、イマチニブで移行阻害

自己免疫性水疱症のひとつである天疱瘡の自己抗体をマウスに静脈注射すると、マウスの皮膚には天疱瘡の自己抗体の沈着が生じ、最終的に脱毛が生じる。これは、天疱瘡患者の皮膚で水ぶくれが生じるのと同じような機序が想定される。そこで今回の研究では、このマウスモデルを用いて、自己抗体の血中から皮膚への輸送を定量的に評価する手法を確立。同手法を用いて、自己抗体の皮膚への輸送は、時間ならびに血中濃度依存的に生じることを確認した。さらに、自己抗体の皮膚への輸送がIgGのレセプター分子、あるいは、Ablファミリーチロシンキナーゼによって制御されるかどうかを、阻害抗体やノックアウトマウス、代表的なAblファミリーチロシンキナーゼ阻害薬である「」を用いて、比較・検討した。

その結果、定常下での血管から皮膚への抗体移行において、既存の IgGレセプター分子は必要ないこと、輸送はカベオラという小胞構造を利用するものであること、カベオラの機能はAblファミリーチロシンキナーゼにより制御されることなどが明らかになった。また、イマチニブは、皮膚への抗体移行を阻害することで、天疱瘡モデルマウスにおける脱毛の発症の程度を軽減しうることがわかった。今回の成果を基盤として、現在、自己免疫性水疱症()に対するイマチニブの臨床治験が同大医学部附属病院皮膚科で行われている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 重度な精神疾患、「電子メール」による医療的介入が有効な可能性-米ダートマス大
  • PTSD患者の「恐怖のON・OFF症状」が、交互に現れていることを確認-ATRほか
  • 神経筋接合部の形成増強治療、老齢マウスで運動機能増強効果を確認-東大医科研ほか
  • 肝がんの血管新生阻害剤またはTACE治療、早期にがん微小環境の免疫に影響-大阪市大
  • 樹状細胞における炎症反応を負に制御する新たな分子「PDLIM7」を発見-理研ほか