医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > オレキシンによる体重制御の仕組みを解明、抗肥満薬の開発に期待-東邦大ら

オレキシンによる体重制御の仕組みを解明、抗肥満薬の開発に期待-東邦大ら

読了時間:約 2分2秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年10月03日 PM12:00

睡眠、摂食、エネルギー産生の制御に関与する神経ペプチドに着目

東邦大学は10月1日、神経ペプチド「」を欠損させたマウスのエネルギー代謝を検討し、オレキシン神経やオレキシン受容体の体重制御における役割を明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部解剖学講座の船戸弘正教授(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構客員教授兼務)、恒岡洋右講師、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史教授、柿崎美代研究員らと、、自治医科大学らの研究グループによるもの。研究成果は、「iScience」で公開された。


画像はリリースより

ヒトの身体には、体重を一定に保つシステムがある。このシステムの堅牢さは個人差や民族差が大きく、安価な高カロリー食が普及し運動不足になりがちな現代社会においては、体重増加を抑える働きは脆弱になっていると考えられている。エネルギー代謝の制御にはさまざまなホルモンや神経伝達物質が関与しているが、今回の研究では神経ペプチドであるオレキシンに着目。オレキシンは、脳の視床下部で作られ、睡眠、摂食、エネルギー産生の制御に関与する。これまでの研究から、オレキシンやオレキシン神経を欠損したマウスは、高脂肪餌飼育により肥満することと、オレキシン2型受容体アゴニストにより体重増加が抑えられることが知られていた。

オレキシン神経に体重の恒常性を高める役割

今回の研究では、まず野生型マウスを用いて、運動による体重増加抑制と、高脂肪食による体重増加促進の、どちらの効果が優勢かを調査した。その結果、マウスが走れる回転ホイールを設置したケージでは、高脂肪餌で飼育しても体重増加が大幅に抑えられていた。つまり、運動環境にあるマウスは高脂肪餌飼育でも太らないとされた。一方、オレキシン神経を後天的に欠損させたマウス(オレキシン―アタキシンマウス)では、同じ環境でも肥満していった。このことから、オレキシン神経は運動量と食餌摂取量のバランスをとり、体重の恒常性を高めることに役立っていることがわかった。

さらに、オレキシンの受容体には1型受容体と2型受容体の2種類があることから、これら受容体ノックアウトマウスのエネルギー代謝を検討した。オレキシン1型受容体欠損マウスは食餌誘導性肥満を生じにくく、普通餌と高脂肪餌の摂餌量に違いがないことがわかった。一方、2型受容体欠損マウスは、高脂肪餌飼育時のエネルギー消費量が低下していた。どちらの受容体欠損マウスも、オレキシン欠損マウスほどの肥満を示さなかったことから、各受容体シグナルは肥満を抑える効果を持つことが明らかになった。

最後に、オレキシンは褐色脂肪組織の発生に重要であり、オレキシン欠損マウスは褐色脂肪組織の機能および形態に異常があるとの報告が他の研究グループからなされていたが、検討の結果、オレキシン欠損マウスの褐色脂肪組織に明らかな異常は認められなかった。

これらの結果から、オレキシン神経は高脂肪餌と運動のバランスを変えることによって、個体を太りにくく維持する作用があること、各オレキシン受容体はエネルギー代謝に関して特異的な役割を持っていることが示唆された。このことは、オレキシン受容体を標的とした抗肥満薬の開発のほか、運動と食事を通した健康なライフスタイルの確立に貢献するとして、今後の研究に期待が寄せられている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 「飲み会」における新型コロナ集団感染事例公表、一般的対策に加え新たな提言-感染研
  • IPF発症リスク関連遺伝子、ANCA関連血管炎発症リスクに関わる-筑波大ほか
  • 細胞内リソソームの輸送が、放射線治療に耐えたがん細胞の浸潤能促進に関与-北大ほか
  • 骨髄移植後のGVHDによる皮膚病変、ランゲルハンス細胞が進展を抑制-筑波大ほか
  • 発達性協調運動障害を有する児は、運動主体感の時間窓に誤差があると判明-畿央大ほか