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難治性の神経膠腫に対する有望な治療法を発見-名大

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2019年08月23日 PM12:00

IDH遺伝子の変異がない低悪性度神経膠腫の有効薬の研究

名古屋大学は8月20日、難治性の脳腫瘍である神経膠腫の中で、特定の遺伝子異常がある腫瘍の患者において、EZH2阻害剤が有効である可能性を見出したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科・腫瘍生物学分野の近藤豊教授、新城恵子助教、同脳神経外科学の夏目敦至准教授、大岡史治助教らによるもの。研究成果は、米国がん学会誌「Cancer Research」のオンライン版に掲載された。

神経膠腫は、最も多い脳腫瘍のひとつで予後不良な腫瘍である。現在の標準治療による生存期間中央値は約14.6か月とされる。

低悪性度神経膠腫は、神経膠腫の中では比較的悪性度が低いものの、手術を含めた集学的治療によって完治することが少なく、確実に増大し生命を脅かす。グルタミン代謝に関わるIDH遺伝子の変異の有無によって大きく2つのサブタイプに分けられる。IDH遺伝子に変異がある場合は予後が比較的良好だが、変異がない場合は予後不良。ヒト神経膠腫の解析研究では見つけることができなかった神経膠腫の形成に重要な異常分子を同定し、有望な治療薬を見つけることを目的に研究は行われた。

p53とNF1遺伝子異常がある細胞株にEZH2阻害剤を投与で改善

画像はリリースより

研究では、IDH遺伝子変異がない低悪性度神経膠腫を発症するマウスモデル(MADAマウス)を作成し、腫瘍になる前の異常細胞と腫瘍細胞を解析した。今回用いたMADAマウスモデルは、p53とNF1遺伝子異常をもつ細胞だけが緑色に発光し、腫瘍を形成する前の段階からその細胞だけを回収し解析することができる仕様となっていた。その結果、脳腫瘍を形成する前の早い段階からエピゲノム修飾酵素であるEZH2が高発現していると判明。EZH2が多くの重要な遺伝子のエピゲノム異常を引き起こし、腫瘍の形成に重要であることが明らかとなった。また、MADMマウスにEZH2阻害剤(EPZ6438)を投与し、MRI画像で腫瘍体積を確認したところ、腫瘍の増大が抑えられていることを確認。ヒトのIDH遺伝子変異がない低悪性度神経膠腫でもEZH2は高発現しており、、NF1遺伝子異常をもつ低悪性度神経膠腫の細胞株(TM31)にEPZ6438を投与すると、細胞増殖が抑えられることもわかった。

EZH2阻害剤は現在、血液がん等で臨床治験が行われ、抗腫瘍剤としての有効性が確認されつつあり、近い将来において実際の臨床現場で使用される治療薬となる可能性がある。「今後は、有効な治療法がないとされているIDH遺伝子変異がない低悪性度神経膠腫の中で、特にp53、NF1遺伝子異常がある腫瘍の患者に対してEZH2阻害剤の使用が可能になることを目標とし、まずはEZH2阻害剤の臨床治験を進めることを検討していきたい」と、研究グループは述べている。

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