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世界初、パーキンソン病患者脳でレビー小体がアミロイド線維を含むことを確認-AMED

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2019年08月22日 PM12:00

患者脳のレビー小体はアミロイド線維を含むのか

(AMED)は8月20日、マイクロビームX線回折という手法を用いて、パーキンソン病患者の脳内に実在するタンパク質異常凝集体であるレビー小体に対する直接的な微細構造解析を行った結果、レビー小体がアミロイド線維を含有していることを世界で初めて証明したと発表した。この研究は、大阪大学大学院医学系研究科の荒木克哉特任研究員(市立豊中病院神経内科医員を兼任)と望月秀樹教授(神経内科学)ら、および、(JASRI)の八木直人特別研究員らとの大型放射光施設SPring-8における共同研究によって行われたもの。研究成果は、「米国科学アカデミー紀要」(PNAS)に同日付で公開された。


画像はリリースより

近年、レビー小体の主成分でパーキンソン病の原因タンパク質であるαシヌクレインから人工的に作製されたアミロイド線維の断片が脳内で増殖、伝播することが動物実験で確認されていた。この増殖や伝播を抑制することでパーキンソン病の発症や進行を抑制するという治療法の開発が世界中で盛んに行われているものの、そのような現象が患者の脳内で起こっているという十分な証拠はなかった。

一方で、全身にアミロイド線維が沈着することで発症するアミロイドーシスという疾患が古くから知られている。この疾患は、一般に患者から採取した組織において、アミロイドを染色するコンゴレッドという色素で染色される細胞外凝集体が見出されることで診断がなされる。また、アミロイドーシスはパーキンソン病と同様に進行性の難病とされてきたが、最近になって、一部のアミロイドーシスにおいてアミロイド線維の凝集を抑制することにより症状の進行を抑制する治療が日本でも保険適用となり、治療が行われている。

かなり前からパーキンソン病患者の脳内に特徴的なタンパク質異常凝集体であるレビー小体が形成されることはわかっていたが、レビー小体は「コンゴレッド染色で染まらない」かつ「細胞内」の凝集体であることから、アミロイドーシスではないというのが一般的な見解とされていた。今回研究グループは、これまでの見解と動物における実験結果とが矛盾していることの核心に迫ろうと考え、パーキンソン病患者の脳切片に実在するレビー小体の微細構造を直接的に解析して、レビー小体がアミロイド線維を含有しているかどうかを調べた。

SPring-8と共同で、脳切片内の凝集体の微細構造解析を実現

これまでパーキンソン病患者の脳内に存在する直径10μm程度のレビー小体の構造について、電子顕微鏡などを用いて直接的に解析することは技術的に困難だった。そこで研究グループは、SPring-8の放射光から、より細くて強いX線マイクロビームを作成し、さらに高解像度の顕微鏡を用いた測定システムを構築した。このシステムにより、患者脳内に実在するレビー小体に直接X線マイクロビームを照射して構造解析を行うことに成功し、X線回折という手法を用いて、レビー小体がアミロイド線維を含有していることを世界で初めて確認した。

これは、前述の矛盾点を解消する重要な成果。細胞「外」沈着物というアミロイドーシス診断における古典的な概念にとらわれず、細胞「内」沈着物ではあるもののアミロイド線維を含有するレビー小体が形成されるパーキンソン病は、アミロイドーシスの一種であるという新たな概念を提唱する根拠となる画期的な成果と考えられるという。

今回の成果により、一部のアミロイドーシスで実用化されているアミロイド線維の凝集抑制治療がパーキンソン病においても応用できる可能性が示され、現在盛んに行われているパーキンソン病に対する凝集抑制治療の開発がさらに加速することが期待される。また、今回の成果は、パーキンソン病が脳だけの病気ではなく、アミロイドーシスと同じく全身性の病気であるという概念を支持する根拠となる。さらに、「今回の研究で構築された測定システムは、非常に難しいとされる脳内の数μm程度の凝集体に対する直接的な微細構造解析を可能としていることから、神経変性疾患のみならず、がんや膠原病といった多くの疾患にも応用可能であり、次世代の病理学的研究ツールとして発展することが期待される」と、研究グループは述べている。

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