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病院への移動手段がヘリのみは普通。米国無保険者の過酷すぎる実態

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2019年07月17日 PM03:00

航空救急搬送の費用負担は「1回で4万ドル」

ヘリコプターなどの航空機を用いた救急搬送は、唯一の救命手段になり得る場合がある。しかし、米ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のGe Bai氏らが実施した研究から、こうした航空救急(air ambulance)には1回当たり約4万ドル(約430万円)もの高額な費用負担が求められている米国の実態が浮き彫りになった。この研究結果は「Health Affairs」7月1日オンライン版に発表された。


画像提供HealthDay

ヘリコプターなどの航空機を用いた救急搬送は、唯一の救命手段になり得る場合がある。しかし、米ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のGe Bai氏らが実施した研究から、こうした航空救急(air ambulance)には1回当たり約4万ドル(約430万円)もの高額な費用負担が求められている米国の実態が浮き彫りになった。この研究結果は「Health Affairs」7月1日オンライン版に発表された。

Bai氏らは今回、メディケアのデータを用いて航空救急の費用を分析した。その結果、2016年にメディケア加入者が利用した航空救急サービスの約85%をヘリコプターによるサービスが占めていた。2016年の1回当たりの航空救急の請求額の中央値は3万9,000ドル(約420万円)で、4年前の2万4,000ドル(約260万円)から約60%増加していた。この金額は、2016年の平均的な米国人家庭の世帯収入の半額を超えているという。

また、救急搬送の請求額比(請求額をメディケアの支払額で除した額)の中央値は、2012年から2016年にかけてヘリコプターによる搬送で55%増加し、飛行機による搬送で46%増加していた。

なぜ、航空救急の請求額はこれほどまでに膨れ上がったのだろうか? Bai氏らの研究によると、ヘリコプターによる航空救急の請求額はメディケアの基準額の5倍、マイル当たりの請求額(mileage rate)は同基準額の7倍だった。また、飛行機を利用した航空救急の請求額はメディケア基準額の4倍、マイル当たりの請求額は同基準額の約10倍だった。一方、陸路で救急搬送された場合はこれらと比べるとかなり低く、救急車による救急搬送の請求額はメディケア基準額の1.5倍だった。

航空救急を必要とする事態に陥る機会はまれだと考えている人は多いかもしれない。しかし、米航空医療サービス学会(AAMS)によると、米国では1時間以内に外傷センターにたどり着くための唯一の移動手段がヘリコプターという農村部の住民が8500万人を超える。

一方で、救急サービスの領域では驚くほど高額な医療費の請求書(surprise billing)が問題となりつつある。例えば、カイザー・ヘルス・ニュースで最近、紹介されたのが35歳の放射線科医Naveed Khan氏の事例だ。Khan氏は、テキサス州のレッド川沿いを四輪バギー(ATV)で走行していた際、ATVが横転する事故に遭い、左腕に激しい損傷を受けた。最初に診察に当たったウィチタ・フォールズの病院は、左腕を治すには直ちにフォート・ワースの外傷センターにヘリコプターで搬送する必要があると判断したが、108マイルの飛行に5万6,000ドル(約600万円)が必要になった。このうち1万2,000ドルはKhan氏が加入する保険会社が支払ったが、残る4万4,000ドルは自己負担だったという。

このように航空救急の費用が膨れ上がった背景には、公的医療保険のメディケアやメディケイドにおける過少納付(underpayment)の問題があるとされている。AAMSは「メディケアとメディケイドの未納額が増大する中でも、航空救急サービスを維持する必要があり、航空救急の料金が引き上げられた」と説明する。しかも、ヘリコプターによる航空救急の搬送者の70%以上をメディケアやメディケイドの加入者、または無保険者が占めているという。

Bai氏は、航空救急サービスを提供する側に請求額の妥当性を明示することが義務付けられていない点や、自由に請求額を設定できることが問題だと指摘。AAMSも、ヘリコプターによる航空救急サービスを維持するための方策として、「まずはコストの透明性を確保することだ」と提言している。(HealthDay News 2019年7月2日)

▼外部リンク
Need Emergency Air Lift to Hospital? It Could Cost You $40,000

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