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肺がんのリキッドバイオプシー技術を開発、承認申請へ-奈良先端大ら

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2019年07月16日 PM12:15

非侵襲的に血液で行えるEGFR変異検査

奈良先端科学技術大学院大学は7月10日、血液中に存在する微量の肺がん遺伝子の異常(変異)を検出する高感度技術を開発したと発表した。また同日、厚生労働省へ、製品名を「EGFRリキッド遺伝子解析ソフトウェア(EGFRリキッド)」とした同技術の承認申請を行った。この研究は、同大先端科学技術研究科バイオサイエンス領域疾患ゲノム医学研究室の加藤菊也特任教授と、大阪国際がんセンターの呼吸器内科、呼吸器外科との共同研究によるもの。承認申請は株式会社DNAチップ研究所が行い、承認されれば、医療現場での使用が可能となる。


画像はリリースより

進行性肺がん治療には、イレッサ、タルセバ等の上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(-TKI)が広く使われている。しかし、これらの薬剤はEGFR遺伝子に特定の変異がある場合に限られるため、進行肺がん治療にはコンパニオン診断を行い、EGFR変異検査をするのが必須となっている。この検査では肺生検でがん組織を採取するが、肺がんは他臓器のがんに比べて腫瘍組織の採取が難しく、侵襲性が高い。またEGFR-TKI治療により耐性が起こるが、その約半数はEGFRの別の変異(T790M耐性変異)による。そのため、耐性変異検査のニーズは高いが、再発巣や転移巣の生検はさらに難しい。これらのことから、非侵襲で行えるEGFR変異検査の研究開発が行われている。

EGFR検査を非侵襲性の血液検査で代替できれば、この領域の実地臨床に大きな進歩をもたらすことになる。がん患者血液中にはがん細胞から遊離したDNA(circulating tumor DNA, )が極少量存在し、EGFRの変異を検出できる。ただし、ctDNAは極微量しか含まれておらず、検出は非常に難しい。そのため、微量変異を検出する技術の開発が必須であった。

従来法との比較試験で良好な結果を確認し、承認申請

次世代シークエンシング技術(NGS)は、遺伝情報を解析する強力な技術で、個人の全ゲノム配列(全遺伝情報)を低コストで得られる。NGSで肺がん患者血液中のEGFR遺伝子断片のみを多数解析して変異を探索すれば、変異が低頻度でも検出することが可能だ。従来の検査技術では5%の変異がないと検出できないものも、NGSを応用した場合、例えば1万分子解析すれば0.01%の変異でも検出できる。加藤特任教授は2013年に、すでにこの検出技術を開発していた。

今回研究グループは、この技術の承認に向けての試験を2013~2015年に行い、288名の肺がん患者について、従来の検査法(肺がん組織の生検)と新しい技術(血液を使用)を比較し、「十分実地臨床で使用可能」との成績を得た。この研究成果を踏まえ、同技術の薬事承認申請をするために医薬品医療機器総合機構()と協議を開始したが、当時はNGSの薬事行政上の取扱いが定まっておらず、協議は難航。しかし、徐々にNGSの医療上の重要性が一般にも理解されるようになり、厚生労働省の見解も定まってきた。

2017年からPMDAとの協議を再開し、同検出技術に関する追加データについて議論を行った。主要な追加実験は、同一検体(肺がん組織)を用いた従来法と同技術の比較。2018年にこの比較試験を行い、良好な結果を得た。その他の申請に必要な各種データは株式会社DNAチップ研究所で取得、2019年3月のPMDAとの協議で、承認申請の了解を得た。正式な製品名称は「体細胞遺伝子変異解析プログラム(抗悪性腫瘍薬適応判定用)」で、販売名は「EGFRリキッド遺伝子解析ソフトウェア」。類別は、「プログラム1 疾病診断用プログラム」となっている。

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