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相手の感情の強さを誤って判断する傾向、児童期まで特に強いことが判明-神戸大

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2019年06月28日 PM01:00

情動的領域において、自己中心性バイアスが生じるかを検討

神戸大学は6月24日、小学生のみならず、高校生や大人においても、「自分だけが知っている情報」に左右されて、他者の感情の強さをゆがめて判断してしまう場合があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学院人間発達環境学研究科の林創准教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Experimental Child Psychology」に掲載されている。


画像はリリースより

発達心理学の研究によると、3歳頃までの子どもは、他者の視点に立ち、相手の意図や考えを明確な形で理解するのは難しく、年齢が上がるにつれて、「物事を自分の視点で捉えてしまう傾向」(自己中心的)が弱まることが知られている。しかし、大人でも、自分を基準に他者の心の状態を捉えてしまうような「」が生じる場合がある。これまでの自己中心性バイアスの研究は、「他者の視点や考えの理解」などの認知的領域が主で、「他者の感情の理解」という情動的領域では、自分自身の感情の影響を調べた自己中心性バイアスの研究がある。

今回の研究では、情動的領域において、自分自身の知識が影響を与えてしまう自己中心性バイアスが生じるのか、生じるとすれば、年齢や状況(被害を受けて悲しむネガティブな状況/助けてもらって喜ぶポジティブな状況)によって、バイアスの程度に差があるのかを検討した。

他者の感情理解場面で自己中心性バイアスが生じ、その強さは年齢とともに弱まる

研究グループは、小学3年生(8~9歳)106人、6年生(11~12歳)108人、高校1年生(中等教育学校4年生、15~16歳)122人、大人154人を対象に、感情理解における自己中心性バイアスを調査した。

一般的に、同じ結果であっても、行為者の行為が「意図的」であった場合の方が、「偶発的」であった場合より、行為の受け手は強い感情を抱くと判断する。研究では、2つの話で構成された4場面を用意。4場面のうち2場面は、主人公が被害を受けて悲しむ「ネガティブ状況」(例:女の子が男の子に積み木を壊されて泣く)で、残りの2場面は、主人公が助けてもらって喜ぶ「ポジティブ状況」(例:女の子が男の子に帽子を取ってもらって喜ぶ)。各場面の2つの話での唯一の違いは、行為者の行為が「意図的」(例:男の子がわざと女の子の積み木を壊す/男の子が苦労して女の子の帽子を取って、女の子に渡してあげる)なのか、それとも「偶発的」(例:男の子がうっかり女の子の積み木を壊す/男の子がたまたま女の子の帽子を拾ったので、女の子に渡してあげる)なのかという点だ。なお、各状況内の2場面で、主人公と行為者の性別を入れ替えた。各場面で「主人公が知っている条件」と「主人公が知らない条件」を設定し、各参加者には2つの話を比較して「どちらの主人公がより悲しいか」を判断してもらった。前者は、主人公が行為者を見ていたので、その行為が意図的なのか偶発的なのかを知っている条件、後者は、主人公がその場にいなかったので、行為者の行為が意図的なのか偶発的なのかを知らない状況。各場面で事実確認の質問をした後、「感情理解質問」(例:「どちらの女の子の方が、より悲しんでいると思いますか?(ネガティブ状況)/どちらの女の子の方が、より喜んでいると思いますか?(ポジティブ状況))を実施した。

自己中心性バイアスの程度を検討するため、各参加者の「感情理解質問」の結果について、「得点」を割り当て、平均を算出。得点の平均は、すべてで統計的に有意に0より大きかったため、「行為者の行為が「意図的」であった場合の方が、「偶発的」であった場合より、行為の受け手は強い感情を抱くと判断する」という一般的傾向を追認できた。

その上で、「主人公が知らない条件」では、どちらの主人公も同じ強さの感情を抱いているはずなので、論理的には0になるはずだが、結果は全てで統計的に有意に0より大きかったことから、行為者の行為が「意図的」であった場合の方が、行為の受け手は強い感情を抱くと判断する傾向がみられた。これは、参加者が「自分の有する知識」(行為者の行為の意図性の知識)によって、主人公の感情を理解したことを意味する。つまり、年齢を問わず、他者の感情理解場面で自己中心性バイアスが生じ得るということが明らかになったと言える。また、小学3年生と6年生の得点の平均が、高校1年生と大人より高かったことから、バイアスは小学生において強く生じ、年齢が増すにつれて弱まった。さらに、ネガティブ状況とポジティブ状況で有意な差がなかったことで、感情の方向性に関係なく、同じ年齢では同程度にバイアスが生じることも明らかになった。

今回の研究で得られた知見により、自分自身の有する知識によって他者の感情の強さの理解に歪みが生じることがあり得るということが明らかにされた。また、このことがコミュニケーションの食い違いや、援助・慰めといった社会的行動の生起に影響を与える可能性も示唆している。

研究グループは、「本研究での行為者を自分に置きかえて考えると、自分が悪気なく相手に被害を与えてしまったとき、相手がその意図性を知らない場合でも、相手の悲しみの感情が弱いと勘違いしてしまう可能性が考えられる。小学生までこのようなバイアスが特に強く生じるということを、大人が知っておくことで、子どもの社会性を育む教育や指導に生かすことができる」と、述べている。

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