医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > テクノロジー > 難易度の高い冠動脈複雑病変、PCIの治療どこまで―ボストン・サイエンティフィック

難易度の高い冠動脈複雑病変、PCIの治療どこまで―ボストン・サイエンティフィック

読了時間:約 3分18秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年06月19日 PM02:00

複雑病変へのPCIは今後も増加、CTO病変に対応できる術者確保が課題

ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社は6月4日、冠動脈複雑病変に対する経皮的冠動脈インターベンション()における課題と今後の展望をテーマにプレスセミナーを開催。自治医科大学附属さいたま医療センター循環器内科准教授の坂倉建一氏と藤田医科大学医学部循環器内科准教授の村松崇氏が講演した。


自治医科大学附属さいたま医療センター
循環器内科准教授 坂倉建一氏

食生活の欧米化や日本社会の超高齢化に伴い、急性心筋梗塞などの冠動脈疾患は増加の一途を辿っている。糖尿病などの併存疾患を有する患者も多く、より複雑な病変も増えてきた。冠動脈の複雑病変には、主なものとして分岐部病変、慢性完全閉塞(CTO)病変、高度石灰化病変があり、治療には高度な手技が求められる。

複雑病変のひとつ、分岐分病変の主なものである左冠動脈主幹部(LMT)病変に対しては、2018年に改訂された安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(2018年改訂版)1)で、SYNTAXスコア≦22の場合にPCIの適応がクラスIで推奨された。従来であればLMTには冠動脈バイパス術(CABG)が推奨されていたが、薬剤溶出ステント(DES)の登場・進歩によりCABGに対するPCIの非劣性が示されたことを受けた改訂だ。CTO病変に対しては、薬物治療によっても狭心症が残存し、灌流域にバイアビリティが存在する場合にクラスIIbでPCIが推奨されている。J-CTOスコアを用いた事前の評価で予後を予測できるが、難易度の高い手技を要し、術者には熟練が求められる。同じく高度な手技を必要とする高度石灰化病変に対しては、ロータブレーター(高速回転式経皮経管アテレクトミーシステム)の使用がクラスIIaで推奨。石灰化した部分を削ることで十分な拡張を得てPCIの成功率を上げるためのデバイスとして評価されている。

高齢化のさらなる進展に伴い、今後も複雑病変は必ず増加すると坂倉氏は指摘する。LMT病変へのPCIは、CABGに比べて低侵襲であり、DESでの治療成績も安定していることから、今後も治療件数は増加すると見込まれる。一方で、医療費抑制の観点から治療適応が厳格化し、特に多くの医療資源を要するCTO病変へのPCI適応は減る可能性もあるという。高齢化の速度が速いことから、高度石灰化病変に対するPCIは増えると考えられる。坂倉氏は、複雑病変に対応できる熟練した術者をいかに確保していくかが、今後の課題であると述べた。

デバイス、治療薬の進歩でPCIを取り巻く環境は変化。適応はハートチーム全体で検討を


藤田医科大学医学部循環器内科准教授
村松崇氏

PCIを行う術者にとっていわば最大の敵、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)は、突然死などの死亡率が高いが、最初からPCIを行うことで入院中の死亡を減らすことが可能でもある。2003年に報告されたSTEMIに対するPCIと血栓溶解療法を比較した23の無作為化試験によるメタ解析結果からは、血栓溶解療法群に比べてPCI群で、死亡率や合併症発生率を低下させることが明らかになっている2)。近年、生体吸収性ポリマーを搭載したDESが登場し、PCI後に留置したDESを覆う新生内膜も従来と比べよりよい状態が得られるようになってきた。STEMI患者を対象に、生体吸収性ポリマーを搭載したエベロリムス溶出ステント(S-EES)と従来型のエベロリムス溶出ステント(X-EES)を比較した試験3)では、留置後2週間(S-EES:42.4% vs. E-EES:26.3%、p<0.001、Kolmogorov-Smirnov検定)、4か月(72.2% vs. 62.0%、p=0.04、いずれもKolmogorov-Smirnov検定)と、生体吸収性ポリマーを搭載したDESで被膜性に優れていることが確かめられている。

一方、緊急的な対応を求められない安定冠動脈疾患患者へのPCIに関しては、村松氏は2018年に改訂されたガイドライン1)で、病変によってはCABGに加えてPCIが推奨されたことに言及。SYNTAXスコア≦22で糖尿病を合併しない2枝・3枝病変へは、PCIの適応がクラスⅠで推奨された。SYNTAXスコアについては、より患者のリスク層別化に適したSYNTAXスコアIIの開発が欧州22施設の共同研究として進められているという。さらに村松氏は、血管内超音波(IVUS)ガイド下のPCI施行による治療成績への影響や、出血リスクの高い患者に対するPCI施行に関する最新のエビデンスも紹介。多様な患者背景を踏まえた治療選択の必要性を指摘した。

実臨床における治療方針決定には、ガイドラインの推奨を参考に、冠動脈病変の評価に加えて患者の年齢、腎機能障害や糖尿病といった併存疾患の有無などをふまえた総合的な判断が求められる。村松氏は「PCIの適応については、医師1人だけでなく、看護師など多職種のハートチーム全体で検討して判断することが求められる」と述べた。

参考文献
  1. 日本循環器学会:安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(2018年改訂版)(2019年6月14日閲覧)
  2. Keeley et al.:Lancet. 2003;361:13-20
  3. Shimoda M et al.:Circ J. 2018;82:2594-2601

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 テクノロジー

  • 「G4A Tokyo Dealmaker 2019」コラボレーション企業を発表-バイエル
  • 医師向け「CONNECT-LR」、直腸がん局所再発患者の治療法を専門医にウェブ相談-国がん
  • 敗血症患者に有効な抗菌薬を迅速に選択する新技術を開発-富山大と日立
  • 医療介護専用の完全非公開型SNSと連動した治療支援ツールの提供開始-中外とエンブレース
  • 日本初の左心耳閉鎖システム「WATCHMAN」発売、NVAFの新たな脳卒中予防治療-ボストン・サイエンティフィック