医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 身体が震えるメカニズムを明らかに-群馬大

身体が震えるメカニズムを明らかに-群馬大

読了時間:約 1分44秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年06月14日 AM11:45

高齢者に多い原因不明の「

群馬大学は6月12日、身体が震えるメカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の定方哲史教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Neuroscience」オンライン速報版に、6月15日に掲載される。


画像はリリースより

ヒトは緊張した時などに手足が震える。アルコール中毒でも手が震えることがある。また、震えは老化とともに顕著に見られる現象でもある。震え以外に症状が見られず、 原因がわかっていない病気を「本態性振戦」と言い、65歳以上の約14%と非常に多くの高齢者に見られる。本態性振戦は、意識でコントロールできない異常な動きであるため、細かい作業をする際には支障を来すこととなり、職種によっては高齢者が働き続ける上で大きな障害となる。このように日常的にもよく見られる病気でありながら、本態性振戦の発症原因はこれまでわかっていなかった。

ナトリウムイオンチャンネルNav1.6の欠失で起こると判明

研究グループは、細胞内で他のタンパク質の輸送に関わるタンパク質(クラスIIARFタンパク質)を作ることができないマウスを作製した。このマウスは寝ているときには異常がないが、起きて活動しているときに、常に体を震わせることが明らかになった。小脳は、スムーズな運動を実現する重要な役割を果たしており、小脳皮質から唯一外に信号を送り出す神経細胞であるプルキンエ細胞がその中心的な役割を果たしている。そこで、今回作製したマウスの脳の活動を詳細に調べたところ、プルキンエ細胞が発生する電気信号(活動電位)が弱まっているという異常を発見した。また、プルキンエ細胞の軸索が伸び始める部分(軸索の起始部)において、(細胞外からナトリウムイオンを取り込むタンパク質)のひとつであるNav1.6が失われていることがわかった。これにより、ナトリウムイオンチャンネルの消失が、プルキンエ細胞の電気信号が弱まっている原因であると考察された。一方、マウス作製の際に働かないようにしたタンパク質(クラスIIARFタンパク質)を、このマウスのプルキンエ細胞のみで再び働くようにしたところ、マウスの震えが少なくなり、症状が改善した。

以上のことから、身体の震えは、小脳のプルキンエ細胞の軸索起始部でナトリウムイオンチャンネルのNav1.6が失われることで起こることがわかった。研究グループは今後、老化とナトリウムイオンチャンネルのNav1.6消失の関連性について調べることで、症状の根本的な治療法の開発を試みるとしている。また、アルコール依存症や緊張時に体が震えることについても、このナトリウムイオンチャンネルが働かなくなっている可能性があるため、明らかにしていきたいと述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • うつ病患者、「超低周波変動・超微弱磁場環境治療」で抑うつ症状が改善-名大
  • 食後インスリン分泌に「野菜を噛んで食べること」が影響する機序解明-早大ほか
  • 難治性骨折の治癒促進するプラズマ照射法を開発、損傷部強度3.5倍に-大阪公立大
  • 5歳児の2割弱に睡眠問題あり、弘前市の未就学児の調査結果-弘前大
  • 水虫治療薬テルビナフィン耐性に関与の白癬菌タンパク質同定-武蔵野大ほか