医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > iPS細胞を用いて骨形成過程の可視化に成功、骨形成不全症の病態を再現-CiRA

iPS細胞を用いて骨形成過程の可視化に成功、骨形成不全症の病態を再現-CiRA

読了時間:約 3分4秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年06月13日 PM02:00

ヒトiPS細胞を用い、in vitroで骨形成過程を再現させる

京都大学iPS細胞研究所()は6月11日、iPS細胞を用いて骨形成過程の可視化と骨疾患病態再現に成功したと発表した。この研究は、京大CiRA増殖分化機構研究部門/ウイルス・再生医科学研究所の川井俊介研究員、京大CiRA同部門/同研究所/医学研究科の戸口田淳也教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Nature Biomedical Engineering」に、日本時間で同日公開された。


画像はリリースより

骨組織は常に骨形成と骨吸収の過程(骨改変)を繰り返す動的組織。正常な骨改変過程、およびその病的状態を理解する上で、遺伝子改変マウスを用いたin vivoでの解析は重要な役割を果たしてきた。一方で、疾患解析から創薬への応用を考えると、in vitroでの骨改変過程モデルの構築も重要なアプローチといえる。

今回研究グループは骨改変過程の中の骨形成過程に焦点を絞り、ヒトiPS細胞を用いて、in vitroでの再現系の構築を試みた。研究グループはこれまでに、(Fibrodysplasia Ossificans Progressiva、FOP)患者由来iPS細胞の骨様結節の形成が亢進していることを報告したが、正常細胞からの誘導では安定した結果が得られていなかった。

レチノイン酸シグナルを用いて10日間という短期間で誘導

研究グループは、疾患研究に有用となる、より簡便で安定した誘導法の開発に向けて研究を推進。これまでの誘導法にレチノイン酸シグナルを加えることで、iPS細胞からの骨分化誘導が促進されることを発見した。そこで、これを応用し、骨形成細胞の分化誘導法(骨様結節形成)を確立した。

具体的には、従来の骨様結節誘導法にレチノイン酸シグナルを加えると、4日目より石灰化結節が認められ、10日目までその数は増加した。遺伝子発現を解析したところ、iPS細胞から、骨前駆細胞、前骨芽細胞、骨芽細胞、そして骨細胞に特徴的な分化マーカーが、10日間の誘導期間で順を追って発現していると判明。10日目の骨様結節を酵素処理で単離し、細胞形態を確認したところ、立方形の骨芽細胞様細胞と多数の突起を有した骨細胞様の細胞が認められた。これらにより、iPS細胞から誘導した骨様結節内には骨芽細胞、および骨細胞の特徴を有した細胞が含まれることがわかった。

誘導細胞はin vivoでも骨形成能を有する

次に、共焦点レーザー顕微鏡を用いたイメージングにより、誘導した骨様結節の詳細を解析。その結果、結節表面には骨芽細胞様の立方形細胞が敷石状に分布し、その直下に多数の突起を有した骨細胞様の樹状細胞が、あたかも表面より落ち込んだように存在していた。また結節の底面付近では、結節内部に多くの樹状細胞を認めた。タイムラプスイメージングを用いてこれらの過程を時空間的に調べた結果、iPS細胞から誘導された骨芽細胞は敷石状となり、徐々に結節を形成し、それに伴い表面の骨芽細胞様細胞の中から、結節内部に細胞が落ち込んで、骨細胞様細胞に変化することがわかった。これは、in vivoでの分化形態(類骨(石灰化前の骨組織)への骨芽細胞の埋没による骨細胞への分化)に類似した点があると考えられるという。

続いて、誘導細胞のin vivoでの骨形成能を評価するために、骨芽細胞段階である分化誘導7日目の細胞塊を免疫不全マウスの頭蓋骨欠損部へ移植した。細胞を移植しなかった群では、新たな骨形成は認められなかったが、細胞移植群では欠損部に新生骨が認められ、骨形成部は類骨様組織の形成を認め、ヒト特異的オステオポンチンが陽性であり、iPS細胞由来組織と確認できた。これらより、誘導細胞はin vivoにおいて骨形成能を有することがわかった。

確立した誘導法で、OIの病態再現に成功

最後に、この誘導法を用いて、遺伝性骨疾患である骨形成不全症(OI)の病態再現を行った。標準iPS細胞、OI患者さん由来iPS細胞(OI iPS)、変異を遺伝子編集で修復したiPS細胞の3つの細胞と、OI iPSを誘導中にmTORiを加えた4群で分化誘導を行い、石灰化結節形成能と1型コラーゲンの免疫染色の比較を行った。

その結果OI iPSにおいて、標準iPS細胞及び変異修復iPS細胞と比較して、石灰化結節形成能の低下、コラーゲンの細胞外分布異常及び細胞内の蓄積を認めた。またこれらは、(mTORi)の添加により部分的な改善を認めた。以上より、既報のOIの病態である、石灰化能の低下・コラーゲンの分布異常という、in vitroにおける病態再現が確認できた。また、有効性が示唆されているmTORiにおける部分的な改善も認めたことから、この誘導系を用いて、候補薬剤の効果を確認することも期待できると考えられた。「今回の研究成果は、骨形成過程に関わる病態の解析から創薬において、有用なアプローチとなることが期待される」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 初期乳がんリンパ節転移を効率的に治療する新しい手法を開発-東北大ら
  • 乳がん細胞の浸潤能に関わる酵素輸送機構と関連タンパク質を発見-東京薬科大ら
  • 日本人集団に特有の疾患関連SNPを搭載「ジャポニカアレイNEO」を開発-ToMMo
  • 慢性痛が抑うつ状態を引き起こす脳内メカニズムを解明-北大
  • 大腸がんBRAF遺伝子変異を3タイプに分類、うち1タイプで抗EGFR抗体が有効-国がん