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診療効率化の裏でなぜ?医師が自殺する理由

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2019年06月12日 PM03:30

医師のバーンアウトで年間50億ドルの医療費増

疲労でストレスがたまった医師たちが働き続けることで、不十分な医療ケアや患者の不満、医療過誤訴訟を招き、米国の医療費を増大させている―。そんな研究結果を、シンガポール国立大学のJoel Goh氏らが「Annals of Internal Medicine」5月27日オンライン版に報告した。この研究では、米国における医師のバーンアウト()に起因する医療費の増加分は年間約50億ドル(5400億円)と推定されたという。


画像提供HealthDay

Goh氏は、研究の背景について、「医師のバーンアウトは離職や生産性の低下と関連することが知られているが、経済的コストについてはよく分かっていなかった」と説明する。また、コストが明確でないため、医師のバーンアウト対策プログラムの経済的な効果についても明らかになっていないという。

今回の研究は、Goh氏が米スタンフォード大学および米メイヨー・クリニック、(AMA)の研究者たちと共同で実施したもの。研究チームは、医師の離職やバーンアウトによる診療時間の短縮に関連したコストを推定するための数学的モデルを作成し、費用対効果分析を行った。その結果、医師のバーンアウトに関連した年間コストは、施設レベルでは医師1人当たり約7,600ドル(約82万円)、国全体では30億~60億ドル(3200億~6500億円)に上ると推定された。

Goh氏らによれば、米国では、程度に差はあるが、バーンアウトに苦しんでいる医師は少なくない。2014年には約54%がバーンアウトの症状を少なくとも一つは抱えていることが報告されている。この割合は、米国の全ての就労者の約2倍だという。

この論文の付随論評を執筆した米南カリフォルニア・パーマネンテ医療グループのエグゼクティブ・メディカルディレクターを務めるEdward Ellison氏は「医師の医療行為がますます難しくなってきていると感じている」と話している。同氏は「最近では、医療行為はほぼ全てモニタリングされ、評価され、報告されるようになっている。また、電子カルテには多くの利点があるが、医師はパソコンと向き合う時間が増えた一方で、患者と共有する時間が奪われてしまった」と説明している。

また、医師のバーンアウトが大きな経済的損失をもたらすことを示した今回の研究結果を踏まえ、Goh氏は「その予防や治療は管理上、望ましい対策であるだけでなく、経営にもメリットがある」と述べている。一方、今回の研究には関与していない米イェール大学イェール・グリフィン予防研究センターのDavid Katz氏は「医師のバーンアウトは現実に起こっている深刻な問題だ」とした上で、「コスト面ばかりが強調される昨今の風潮は残念に思うこともあるが、この論文が示すように、問題が整理されると緊急に対応すべき優先課題が明確になる」と述べ、Goh氏らの研究を高く評価している。

さらに、Ellison氏は付随論評で、「現実としてバーンアウトを抱える医師はあまりにも多い」とし、「医師のバーンアウトで問題になるのは不安や抑うつ、不眠、精神的および身体的な消耗感、集中力の低下だけではない。米国では毎年、推定で300~400人の医師が自殺し、自殺率は一般人口と比べて男性で40%高く、女性では130%も高い」と述べている。その解決策として、同氏は医師主導で電子カルテを効率化することで、医師が自分の時間を取り戻し、患者との接点も増え、診療の喜びを感じられるようになるのではとの見方を示している。(HealthDay News 2019年5月28日)

▼外部リンク
Doctor Burnout Costly for Patients, Health Care System

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