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注目のPHRサービスで蓄積されたRWD、活用の実態と将来展望-ウェルビー

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2019年06月07日 AM09:30

PHRの利用による糖尿病患者への自己管理意識向上の可能性

株式会社Welbyは6月4日、「Patient Centric Seminar 2019 Spring -PHRサービスが拓く”Real World Data”の実践活用-」と題したセミナーを開催。Real World Data()とは、レセプトデータ、DPCデータ、電子カルテデータ、健診データなど、実際の診療行為に基づくデータおよびデータベースを指す。RWDは、これまでDPC、電子カルテなどの診療情報データをベースに構築されてきていたが、近年は、、PROなど患者さんからの直接記録データもRWDとして注目されている。今回のセミナーでは、RWDの実臨床での活用事例とインプリケーション、および、RWDを活用する上で不可避である個人情報保護に関して、各分野の有識者による講演が行われた。

まず、医療法人社団ライフスタイルともながクリニック糖尿病・生活習慣病センターの朝長修院長による「Real WorldにおけるPersonal Health Record(PHR)を用いた糖尿病患者の生活改善の試み」と題した講演が行われた。朝長先生は、糖尿病治療に欠かせない、食事、運動などの生活習慣の改善に、スマホアプリによる意識変容、行動変容、自己管理のサポート効果があるかを検証した。そのツールとして、Welbyが糖尿病患者の自己管理と療養指導をサポートするクラウドサービスとして提供する「Welbyマイカルテ」というアプリを利用。実際に、同アプリを血糖コントロール不良な患者に勧め、アプリ利用後に意識や行動変化の有無を問うアンケート調査を行った。その結果、「血圧や体重測定が習慣となり、日々の生活を見直すきっかけとなった」「食事を意識するようになった」などの声が多く、朝長先生は、「このアプリを通じ、医療機関と情報を共有することで患者は、医療者に見守られており、ひとりではないのだという心強さを感じるとともに、自己管理の継続に対するモチベーションも向上した」と、述べた。また、「このアプリのようなPHRを患者が継続的に利用するには、医療スタッフが積極的に患者と関わることも大切」と、締めくくった。

なお、同調査の結果は、2018年に開催された第61回日本糖尿病学会で、「PHRの利用による糖尿病患者への自己管理意識向上の可能性」として報告されている。

医療情報の3省3ガイドライン、個人情報保護コンプライアンスへの対応が課題

次に、個人情報保護に関して、複数の有識者による講演が行われた。製薬企業では、RWDの活用が急速に進む一方で、多様な大規模データを安全に管理するための社内工数の増加、柔軟なデータ分析環境の構築・運用、必要に応じたコンプライアンス対応などが課題となっている。アマゾン ウエブ サービス ジャパン株式会社(事業開発本部シニア事業開発マネージャーヘルスケア・ライフサイエンス担当)の左近康隆氏の講演では、AWSクラウド環境上での医療データベースなどを含めたRWDの収集・分析手法や、AWS環境上におけるGxP/CSV対応、医療情報の3省3ガイドライン対応、個人情報保護といったコンプライアンス対応への考え方につき、解説が行われた。

続いて、医療情報をめぐる国内法や規制をめぐる動向と国際連携に関して、弁護士法人漆間総合法律事務所副所長の吉澤尚氏が講演した。吉澤氏の講演では、ゲノムに限定されないRWD活用で個別化・精密医療を実現するための研究基盤データの考え方、日本の研究成果の世界に向けた発信、情報法制に限らず臨床研究法や、そのほかの法令との関係についての考え方、人口減少社会における個人情報・医療情報の法制についての考え方などを解説。吉澤氏は、「デジタルヘルスにおけるRWD活用は、今後日本のインフラ輸出の一角となり期待が大きい領域とされる。これを進めていくためには、相互運用性・国際調和を大事にした、世界基準に合わせた規格に則り、デジタルの運用ルールを行っていくべきだ。国内では病院によって法のルールが異なり、対象年齢により法規制も異なるため、横断的なコホート研究を行う際などに、臨床試験で適用できなくなる可能性があるため、一貫したマネジメントルールを作り、国際的な競争力を得ることが重要」と、述べた。

PHRがもたらす新たなRWDとその可能性

最後に、Welby執行役員/疾患ソリューション事業部事業長の五百川彰仁氏が、PHRがもたらす新たなRWDとその可能性に関して講演した。PHRデータの価値は、アプリのみで効率的にPRO(患者の報告に基づくアウトカム)データを収集・蓄積することができ、また、EHR(診療行為の電子的な記録)を元にしたRWDにないデータ収集も可能なところにあるという。

患者の個別同意を得て蓄積したデータは、例えば、市販後データとして早期エビデンスの臨床へのフィードバックによる育薬機能の強化や、既存市場データとPROによる効率的なセールス・マーケティング等に活用可能。また、症例登録時に患者情報を収集することで登録時点の患者情報の信頼性を上げ、これを中長期的に利用可能なデータベースとして構築し、その後、研究で得られた質の高いデータを蓄積していくことで、これまでになくクオリティの高い医療データベース構築の実現が目指せる。

五百川氏は、日本におけるRWD活用に関し、左近氏や吉澤氏が課題とした医療情報の3省3ガイドライン対応や世界基準に合わせた規格に則るデジタルの運用ルールにも言及し、「Welbyは3省3ガイドラインに則り各種プロジェクトを実施しており、今後はUSやEUのガイドラインにも準拠した形で対応を進めていく予定」と、締めくくった。

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