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匂いがストレスとなるかは状況によって変わると判明-東大

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2019年05月27日 PM01:00

「悪臭の不快感」が、身体的なストレス応答を引き起こすのかを研究

東京大学は5月20日、ヒトが悪臭を嗅いだときの生理状態の変化を調べたところ、悪臭は交感神経系のストレス応答を引き起こすこと、そして、その反応は匂いの不快感に応じて高まることを示したと発表した。この研究は、同大大学院農学生命科学研究科の東原和成教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Psychoneuroendocrinology」に掲載されている。


画像はリリースより

悪臭は、ヒトにさまざまな害をもたらす。現代社会では、事業活動に伴う悪臭公害だけでなく、「スメルハラスメント」といった新たなタイプの悪臭トラブルまで、多くの悪臭問題が存在している。その原因のひとつとして、「悪臭の不快感」が引き起こすストレスが考えられていた。しかし、悪臭の不快感が、身体的なストレス応答を引き起こすのかは、明らかにされていなかった。

同じ匂いでも、不快に感じなければストレスにならないことが判明

研究グループは、実験参加者に悪臭防止法で定められている悪臭を嗅がせ、どのようなストレス応答が引き起こされるか調査した。その結果、不快度の高い悪臭物質は、交感神経系に関わるストレス応答のマーカーである唾液中のα-アミラーゼの分泌量を増加。さらに、同一の匂いを嗅ぐ場合でも、「口臭の匂い成分」のような不快な言葉が付与されて匂いの不快度が増すとストレス応答が高まることや、足の裏の匂い様の悪臭物質にバニラの匂いを混ぜて不快度が低下するとストレス応答の上昇を抑えられることも明らかになった。これらのことから、同じ匂いでも、嗅ぐ状況によってそれがストレスとなるか否かが変化すると考えられる。

今回の研究成果により、普段は不快とされない香りが引き起こす「スメルハラスメント」や「香害」といった悪臭問題の一部は、原因となる匂いを不快と感じないような環境を作ることで解決できる可能性が見出された。また、同研究成果を応用することで、生体のストレス反応に基づく、客観的な悪臭の評価が可能になることが期待される。

研究グループは、「本研究で、不快な悪臭はストレス反応を引き起こすが、同じ匂いでも不快に感じなければストレスにならないということがわかった。情報や感じ方によって悪臭によるストレス度合いが変化するという知見は、匂いと生活のQOLの関係を考えるうえで重要な発見だ」と、述べている。

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