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インフルエンザウイルス感染時の解熱の必要性を明らかに-東北大

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2019年05月23日 PM01:00

発熱の維持と解熱、どちらが患者にとって有益か

東北大学は5月21日、インフルエンザウイルスに感染した際の高熱に相当する高温(39℃、40℃)が細胞障害に与える影響を調べ、高熱による体調への悪影響を受けやすい患者において、解熱の必要性を細胞レベルで示したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科先進感染症予防学寄附講座の山谷睦雄教授、仙台医療センター・臨床研究部の西村秀一ウイルスセンター長、同大学院医工学研究科健康維持増進医工学分野の永富良一教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Heliyon」に掲載されている。


画像はリリースより

インフルエンザウイルスに感染すると、白血球などから放出されるインターフェロンなどの発熱物質によって発熱が促される。インターフェロンにはインフルエンザウイルスの増殖を抑制する効果があり、免疫反応を活性化する役割もある。一方で、高熱が長く続くと、小児では「けいれん」の原因になり、高齢者では、脱水などのために症状が重症化することが指摘されていた。このため臨床の現場では、インフルエンザ患者の症状を改善し、重症化を防ぐ目的で解熱剤が使用されている。

しかし、インフルエンザウイルスに感染した際の高体温がヒトの身体にどのような悪影響を与えるのかについては、これまで科学的に示されておらず、患者に対して「発熱の維持」と「」で、有益なのはどちらなのかが、明らかにされていなかった。

解熱剤などで平熱を維持した方が、細胞傷害性を回避すると判明

研究グループは、ヒト由来の気道上皮細胞を高温(39℃、40℃)および平熱(37℃)で培養し、インフルエンザウイルスの感染が気道上皮細胞の傷害性に及ぼす影響について検証を行った。

インフルエンザウイルスを感染していない細胞と、2009年新型インフルエンザウイルスを感染させた細胞とを比較した結果、5日間高温で培養すると、インフルエンザウイルスを感染しない場合でも、細胞の生存率が低下することがわかった。ウイルスを感染させた場合では、感染3日後から平熱で培養した細胞に比べ、高温で培養した細胞の生存率が大幅に低下。さらに、2009年新型インフルエンザウイルスを感染させた細胞を高温下で3日間以上培養すると、インフルエンザウイルスの増殖(放出量)が減少した。これ以外の季節性インフルエンザウイルスでも同様の結果となり、インフルエンザウイルスが細胞に侵入するために利用している細胞内の小胞(酸性エンドソーム)が高温で減少し、高温による細胞傷害が、ウイルスの増殖の抑制に関連していることも明らかになった。今回の研究結果から、抗インフルエンザウイルス薬でウイルスの増殖を抑え、安全性の確立されている解熱剤「アセトアミノフェン」などを活用して平熱を維持した方が、細胞傷害性を回避できると考えられる。

研究グループは、「本研究によって、インフルエンザウイルス感染の治療における、安全性の確立されている解熱剤の使用の必要性が明確になり、インフルエンザ患者の重症化を防ぐ治療の促進に貢献することが期待できる」と、述べている。

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