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免疫細胞の移動をつかさどる新たな免疫制御因子を同定、炎症性疾患の創薬ターゲットに—阪大

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2019年05月17日 PM12:45

ケモカイン受容体のシグナル伝達に関わるCOMMD3/8複合体を同定

大阪大学は5月14日、免疫細胞の移動に関わる分子としてCOMMD3/8複合体を発見し、COMMD3/8複合体が免疫応答の成立に極めて重要な役割を果たしていることを解明したと発表した。この研究は、同大学免疫学フロンティア研究センター免疫応答ダイナミクス研究室の中井晶子助教、大学院生の藤本潤(博士課程)、鈴木一博教授(微生物病研究所兼任)らの研究グループによるもの。研究成果は、米国科学誌「The Journal of Experimental Medicine」に日本時間で同日、公開された。


画像はリリースより

免疫細胞の移動は、免疫細胞が病原体の侵入を監視し、病原体を検知した場合には効率よく免疫応答を引き起こす上で必要不可欠。一方、免疫細胞の移動は、自己免疫疾患をはじめとする炎症性疾患の病態にも深く関わっており、ある種の炎症性疾患では免疫細胞の移動を標的とした治療法の有効性が確立されている。この免疫細胞の移動をつかさどるのがケモカインとその受容体。今回、研究グループは、免疫細胞の移動を制御する新たなメカニズムを探索する過程で、ケモカイン受容体に会合する分子としてCOMMD3/8複合体を同定し、その機能を解析した。

炎症性疾患治療の創薬ターゲットになる可能性

研究グループはまず、COMMD3/8複合体が欠損すると、ケモカイン受容体を刺激することによるリンパ球の移動が低下することを見出し、COMMD3/8複合体がケモカイン受容体のシグナル伝達を促進することを示した。そこで、そのメカニズムについて解析を進めた結果、COMMD3/8複合体がシグナル伝達分子のGRK6をケモカイン受容体に呼び寄せることによって、ケモカイン受容体のシグナル伝達を促進することを突き止めた。GRK6は、Gタンパク質共役型受容体()リン酸化酵素のひとつ。

次に、COMMD3/8複合体を欠損するマウスの体内におけるリンパ球の移動と免疫応答を解析した。その結果、COMMD3/8複合体を欠損するマウスでは活性化B細胞の移動が異常を示すのにともなって、抗体の産生をはじめとする免疫応答が著しく低下することが判明。このことから、COMMD3/8複合体が、生体内でのリンパ球の移動と免疫応答の成立に、極めて重要な役割を果たしていることが明らかになった。さらに、COMMD3/8複合体を構成するCOMMD3あるいはCOMMD8のいずれか一方を欠損する細胞では他方が分解されてしまう、つまり、COMMD3とCOMMD8は複合体を作ることにより初めて安定に存在し得る、という興味深い性質もわかった。

COMMD3/8複合体を欠損させることで免疫応答が低下したことから、COMMD3/8複合体は、自己免疫疾患やその他の炎症性疾患の治療における新たな創薬ターゲットとなる可能性が示された。COMMD3とCOMMD8は複合体を作らないと分解されてしまうことから、両者を引き離す物質を見つけることができれば、それがすなわちCOMMD3/8複合体の阻害剤になり得ると予想される。「これまでケモカイン受容体を含めGPCRのシグナル伝達については精力的に研究が行われてきたが、GPCRのシグナル伝達のこれまで認識されていなかった新たな制御メカニズムを解明した点においても本研究の意義は大きい」と、研究グループは述べている。

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