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マウスの行動の性差は活性酸素による酸化ヌクレオチドの蓄積が原因と判明-九大

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2019年05月08日 PM12:00

行動や認知機能の性差についてマウスを用いて比較解析

九州大学は4月26日、行動や認知機能への加齢の影響を雌雄のマウスで比較解析し、その性差は活性酸素による酸化ヌクレオチドの蓄積が原因であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学生体防御医学研究所の中別府雄作主幹教授と春山直樹大学院生(当時、現九州大学病院医員)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Progress in Neurobiology」誌にオンライン公開されている。


画像はリリースより

動物の脳機能や行動には性差があるが、その原因やメカニズムはよくわかっていない。一方、女性はうつ病やアルツハイマー病などの発症頻度が男性よりも高いことが知られており、その理由のひとつとしてゲノムの酸化損傷やその修復・防御系の関与が示唆されている。

そこで、今回研究グループは、ゲノムへの酸化塩基8-オキソグアニン()の蓄積を防ぐ8-oxo-dGTP分解酵素()と、 DNAグリコシラーゼ()の両者を欠損するTO-DKOマウスと、野生型マウスを用いて、行動や認知機能への加齢の影響を雌雄のマウスで比較解析した。

dGTPが酸化されやすい、雌マウスの神経前駆細胞内環境

解析の結果、野生型マウスでは雌が生涯を通して雄よりも2倍程度高い自発運動量を示し、雌雄マウスともに性成熟後は加齢にともなって活動量が低下していた。一方、TO-DKO雌マウスでは中・老年期でも自発運動量が高いレベルのまま維持されていた。さらに詳細に解析したところ、MTH1とOGG1が欠損すると、野生型マウスと比べて雌マウスにおいてのみ、海馬と側脳室下帯の神経前駆細胞の核ゲノムに8-oxoGが蓄積し、新生神経細胞がアポトーシス(細胞死)に陥ることを発見。側脳室下帯で生まれた新生神経細胞は、脳内を移動して自発運動を抑制する脳の特定部位(大カレハ島)へ供給されるが、TO-DKO雌マウスではこの大カレハ島が顕著に萎縮し、自発運動量が高いレベルのまま維持されていた。また、TO-DKO雌マウスでは海馬歯状回も萎縮し、軽度の認知機能障害が認められたという。

一方、ヒトMTH1を雌マウスで高発現させると、8-oxoGの蓄積が抑制されて活動量が低下することから、ヌクレオチドプール中のdGTPが酸化されて生じた8-oxo-dGTPが神経前駆細胞のゲノムに取り込まれ、アポトーシスを引き起こすことが明らかになった。

これらの結果は、雌マウスの神経前駆細胞にはそのヌクレオチドプール中のdGTPが酸化されやすい細胞内環境が存在することを示している。しかし、そのような環境下であっても、MTH1とOGG1が神経前駆細胞のゲノムに8-oxoGが高度に蓄積するのを抑えることで、正常な脳機能が維持されていることがわかった。今回の研究によって得られた知見から、今後は男女それぞれの特性に注目した病気の予防や治療法の開発が期待されると、研究グループは述べている。

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