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ペプチドが血液脳関門を透過し、脳組織に蓄積することを実証−九大

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2019年04月11日 PM02:15

マウスを用いたかん流試験によって明らかに

九州大学は4月9日、ペプチドが血液脳関門を透過し、脳組織に蓄積することを、マウスを用いたかん流試験によって世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院農学研究院/五感応用デバイス研究開発センターの松井利郎教授と、福岡大学薬学部の道具伸也准教授や、ブルカージャパン株式会社などとの共同研究によるもの。研究成果は、英科学誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

研究グループはこれまで、アミノ酸が2つあるいは3つ繋がった低分子のペプチドを摂取すると、血圧が改善されることをヒト試験で明らかにし、研究開発された素材は特定保健用食品()として認可を受けていた。しかしその一方で、良質のペプチドを摂取することが健康の維持や生活習慣病の予防・改善に良いとの報告はあったものの、脳までは到達しないとされていた。

また、同研究グループは、血圧上昇抑制作用や動脈硬化進展予防作用を示すジペプチド(2010年)が消化分解されることなく、そのまま体内に吸収されることも明らかにしている。しかし、体内に吸収されたペプチドが脳まで到達するかは不明なままだった。

脳の健全性維持や脳疾患予防に貢献する機能性食品の研究・開発に期待

今回の研究では、構造の異なるさまざまなペプチドについて、マウスを用いた脳かん流試験を実施。Gly-Pro(アミノ酸のグリシンとプロリンがつながったジペプチド)や、Tyr-Pro(アミノ酸のチロシンとプロリンがつながったジペプチド)が、血液脳関門を通って脳実質内に到達することを世界で初めて明らかにした。

さらに、血液脳関門を通ったジペプチドが海馬、視床下部や小脳といった脳器官周辺に蓄積するという、新しい知見を得ることもできたという。ペプチドが海馬や視床下部などの脳器官に蓄積・存在するということは、脳行動に対し、何らかの生理作用を担っている可能性を示唆するものとされる。

研究グループは、「今後はマウスを用いた摂食試験を実施し、認知症やアルツハイマーなどの脳疾患に対する予防効果を明らかにするとともに、細胞レベルで作用メカニズムを解明する予定。これらの成果によって、脳の健全性維持や脳疾患予防に貢献できる新たな機能性食品の研究・開発が期待される」と、述べている。

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